裁判によらず、当事者同士の話し合いによってトラブルを解決するADR(裁判外紛争解決手続)。ADRは裁判に比べて、簡易・低廉・柔軟さをもったトラブル解決が可能になるが、これは消費者のみならず、不動産・建築事業者にとっても有益な制度であるといえる。事業者は当事者同士の板挟みとなり時間と労力を浪費していくケースも多くあるが、ここでADRという話し合いによる具体的な解決策を提案することは非常に前向きなことであるだろう。今回は、法務大臣認証機関である(一社)日本不動産仲裁機構が取り扱うADRを実施する「調停人」としての基礎資格となった「小売電気アドバイザー」が今まで経験してきたトラブルとの関わりを、特定非営利活動法人日本住宅性能検査協会の大谷昭二理事長から紹介してもらう。
16年4月1日より電力小売りが全面自由化となりました。これに伴う事業者と消費者とのトラブルとして主なものは「電気と○○のセットにすれば安くなると言われ、求めていない商品をセット販売された」や「契約時に説明を受けていない費用について負担を求められた」などがあり、不動産業に関するものとしては賃貸管理の場面においてトラブルが発生することがあります。そしてそれは物件オーナーと事業者、入居者と事業者との間で起きています。
物件オーナーと事業者間のトラブルでいえば、「入居者の中の一人が小売電気契約をした場合、その影響が物件全体に及び停電の可能性があるので、物件全体で小売電気契約を前もってしておきましょう」や「新たに電線を引く必要があるので、工事が必要です」と事業者から言われた、という事例があります。しかしこれは誤りで、小売電気は供給ルートは従来の電気と変わらないため、各戸で契約先が変わっても物件全体への影響はありませんし、既存の送電線・配電線を経由して電気が送られるため、新しく電線が引かれることもありません。
また、入居者と事業者間でのトラブルとしては「引っ越し先の物件で小売電気を使用する場合は、スマートメーターが必要になるため、これを購入しなければなりません」と言われることがあり、これも誤りです。つまり、多くのトラブルは小売電気のしくみをよく理解していない消費者をターゲットとした悪徳業者が関わっているのです。そしてそのようなトラブルを起こさないよう、また消費者を守るために小売電気の専門知識を有している「小売電気アドバイザー」は存在しています。























