街道の〝複合施設〟に熱視線 川崎市日進町、リノベで街づくり アート宿舎、シェアハウスなど続々誕生 エリア回遊型で魅力を醸成 NENGO(神奈川県川崎市) 夢は「世界の宿場町」
住宅新報 2018年3月20日 号 11面
「ウニコ」は元々、戦後間もない川崎で創業した食品包装商社ヨネヤマの工場。本社兼寄宿舎だった築53年のビルを同社創業70周年事業としてリノベーション。既存の躯体の歴史や痕跡を残しながらも最新鋭のデジタル木工マシンを駆使した内装や家具により多様な業種が集まる創造的複合拠点に生まれ変わった。
建物は鉄筋コンクリート造5階建てのunicoA(ウニコア)と同4階建てのunicoB(ウニコビ)、更に倉庫だったウニコートから成る。各フロアにはデジタル木工工房「VUILD」やクラフトビール工房、カフェスタンドや卓球場、整骨院のほか、様々な業種が入居するスモールオフィスなどで構成。4階には掘りごたつを用意した〝靴が脱げるコワーキングスペース〟「創荘(そうそう)」があり、川崎に精通したスタッフが事業のサポートも行う。創荘を運営し、街づくりにも携わる川崎経済新聞編集長の田村寛之氏は、川崎の魅力を「農業、工業、商業などあらゆる要素がそろっている上、150万人都市といういろいろな情報を届けるのに程よい人口規模。川崎宿400年の歴史が江戸時代から今につながっている」と話す。
NENGOは今年1月、新たな拠点としてウニコから程近い簡易宿所街に「ドヤアート宿所『日進月歩』」もオープンした。〝泊まれる美術館〟と銘打った同宿所では、成田空港、羽田空港、東京、横浜へアクセスしやすい川崎の利便性を生かし、訪日外国人や若者を主な顧客層として想定。住宅に留まらないエリア活性化を模索した結果、子会社の相楽ホーム(吉崎弘記執行役員、総合旅行業務取扱管理者)が運営管理を行う形で宿泊事業へ進出した。
全15部屋(1部屋2~3畳)の宿は63年3月建築の木造2階建て。リビングの壁を抜き、共用のシャワールームと共用洗面所(各2カ所)を設置する程度の改修に留め、様々なアーティストによる「川崎らしさ」を表現した点が出色だ。60年代から残る簡易宿所街や工場跡地に建てられた団地群、歓楽街、飲み屋街、競馬場など、周辺に点在する一見マイナスに捉えられがちな要素を「らしさ」として定義。例えば、夜の川崎を「愛のまち」と表現したり、富士山と日の出、日進町の地図を融合したりと、共用部や各部屋を制作舞台とした。
宿泊料は平日3500円からと近隣の簡易宿所よりは高めながら、「『街の雑多さが川崎の面白さ』。会社員や就職活動で上京する学生にも利用してもらいたい」と同社広報の奥原拓郎氏。アーティストの作品展示や販売なども構想しており、〝川崎ファン〟を創出し、ファン自らの情報発信につなげたい考え。吉崎氏は「一つの宿で完結するのではなく、銭湯や総菜店など街の中を回遊しながらお金が回る仕組みを整えていきたい。『日進町といえば川崎の宿泊観光のメッカ』となることが目標」とほほ笑む。
この3月にはウニコ内に、相楽ホームが運営するシェアハウス「川崎日進アパートメント〝85〟(ハチゴー)」も誕生したばかりだ。部屋数は全20室。広さは7~約13m2、賃料は月4万5000円~7万5000円で共益費1万5000円(水道、光熱費、インターネット使用料含む)。モルタルの床や天井の躯体はそのままに、各居室は自分らしい好みのカラーにDIYでペイントできる。オーク材を使った広めのキッチンや開放的な屋上などは同施設ならでは。「発酵」をコンセプトとするウニコだけあって、施設内の入居者との交流、川崎の雑多な環境も含めて楽しめる人の入居に期待しているという。運営側では男女比の偏りがないように配慮しながら、外国人や学生の入居も視野に入れる。NENGOにとってはシェアハウス事業を展開することで、今後もウニコの〝住〟分野で関わっていくという決意表明を行っている。
本拠地・川崎の街づくりについて的場社長はこう話す。「ウニコに取り組むときから、『東海道の宿場町を世界の宿場町にする』という方向性は同じ。例えば、『日進月歩』であれば、壁のない日本の建築文化(ふすま、障子など)の宿で世界中の人々が集まり、ざっくばらんに付き合える場にしたい。街の変化を実感しており、今後も行政やウニコ入居者らとの連携を深めていきたい」。(佐々木淳)





















