健康な住宅環境の構築 医療から見た住居の在り方 日本医師会副会長今村聡氏 中国、韓国のテーマと発表者
住宅新報 2018年1月23日 号 10面

今村聡氏
日本は、世界にも類を見ない速さで高齢化が進んでいる。25年には団塊の世代がすべて後期高齢者となり、社会構造が変わってくる。こうした中、今後も持続可能な社会であり続けるためには、高齢者の活躍が不可欠である。そのためには高齢者の健康寿命を延伸する必要がある。そこで、高齢者の日常生活の場である住居の在り方が大変重要になってくる。中国、韓国においても急速に高齢化が進んでいると伺っている。今回、日本での高齢化と住居に関する課題と対応をご紹介することで、問題を共有し、相互に意見を交換できる端緒となることを期待している。
住宅がもたらす影響
総務省の調査によると、高齢者が世帯主となる住宅は82.7%が持ち家である。ただ高齢単身者世帯になると、持ち家の割合は65.6%と下がる。今後、単身世帯が増えていく中で、住み慣れた地域で引き続き生活を続けるには住居の確保が問題となる。厚生労働省の統計によると、介護保険3施設やその他施設・住居系サービスを除いた高齢者向けの住宅の数は少なく、整備状況が遅れている。これら住居の確保が今後必要となってくる可能性がある。
次に住居が健康で快適な生活の場となる必要がある。具体的には温度・湿度、階段差等の配慮が挙げられる。
温度・湿度については総務省消防庁の「熱中症による救急搬送人員数(速報値)」によると、17年8月7~13日の7日間で、全国で4298人が救急搬送され、そのうち、65歳以上の高齢者が約5割(2111人)を占めている。発生場所は「住居」が約4割(1696人)を占めている。また、冬期は脱衣所・浴室と他の居住空間の気温差が大きく、血管の著しい伸縮による、血圧や脈拍の大きな変動による脳梗塞、脳出血を引き起こす危険がある。
このような事故を避けるためには、住居の断熱性を十分に確保し、夏期においてエアコン等を使用して室内気温を適度に保つほか、冬期における部屋ごとの気温差を小さくするなど、室内環境を快適に保つ必要がある。
居住空間の段差については消費者庁と国民生活センターの共同調査(13年)によると、65歳以上の高齢者はそれ以下の者に比べて住宅内での事故発生の割合が高い。発生場所は「居室」が最も多く(45%)、次いで「階段」(18.7%)「台所・食堂」(17%)。さらに症状の度合いは、約6割が軽症だが、75歳以上は重症化する割合が高い。
住宅内のバリアフリー化が提唱されて久しいが、依然事故は発生している。居室内での事故に対しては絨毯などの段差や摩擦の異なるものを変えるほか、階段の手摺りの設置、踏面(ふみづら)・蹴上(けあげ)幅の変更などの対応が求められる。
超高齢化社会に向けて
国土交通省は09年より「長期優良住宅」の認定を始めている。その中で維持管理・更新の容易性や省エネルギー性を求め、住宅が高齢者向けに改築しやすい構造とすることや、居住空間の断熱性を要求している。認定を通してより長期に健康な生活を送る居住空間の確保が期待できる。
一般社団法人健康・省エネ住宅を推進する国民会議は、パンフレット「家族の健康を住まいから始めよう!」を作成した。同会議は「シックハウス」への対応に取り組んできたほか、「住宅の温度差、低室温」対策をターゲットに活動している。私も同会議の健康・省エネ住宅推進委員会に参画している。パンフレットは日本医師会からも都道府県、郡市区医師会へお送りしている。より多くの人が住宅と健康の関係について関心を持つことが期待される。
民間でも住居についての研究や事業が進んでいる。例えば、高齢患者の自立生活を支援するためのスマートハウスの研究として、室内および患者の両足にセンサーを取り付けてモニタリングする研究や、高齢者が抱える日常生活上の困りごとと解決のサポート事業を実施し、その情報をデータベースに蓄積する研究などがある。これらの事業を積極的に推進して、より多くの人々が情報を共有していく必要がある。
【中国】「スモッグ天気による都市住宅、健康への影響及び企画設計での対応策研究」=北京交通大学建築と芸術学院 杜暁輝氏
【韓国】「4次産業革命時代に備えた持続可能な先端自給自足の居住環境開発」=SiTi Plan 田夏鎮氏

















