潮目に挑む不動産ビジネス 人口減少下でも持続する社会へ ◆下 ストックを生かす 〝自分らしさ〟を実現するリノベ
住宅新報 2017年7月25日 号 11面
16年度の新設住宅着工戸数は97万4000戸だった。これは全住宅ストック約6074万戸(13年度住宅・土地統計調査)のわずか1.6%に過ぎない。
住宅市場全体の98%以上を占める既存住宅を、わずかなシェアしかない新築住宅と対置して、わざわざその資産価値をおとしめるかのように〝中古住宅〟と呼ぶことはおかしくないか。しかも、ストックは積み上がる一方だから、いずれは1%を切ることになる。ただ、〝住宅〟と言えばいいのではないか。
不動産流通推進センターは7月20日、「ストック活用コンサルティングが明日を創る」と題してトーク・セッションを行った。パネラーには明海大学不動産学部長の中城康彦氏、リノベーション住宅推進協議会会長の内山博文氏、スタイルオブ東京社長で公認不動産コンサルティングマスターの藤木賀子氏が登壇した。
これは同センターの「不動産コンサルティング制度」発足25周年を記念して開かれたもので、会場の様子をユーチューブでライブ中継するという初の試みにも挑戦した。
特に議論が盛り上がったのは近年、「中古住宅+リノベーション」という購入スタイルが広まり、仲介の現場でもコンサルティング化が進んでいる点についてだ。
これは、今の若い世代を中心に、新築では得られない〝自分らしい〟住まいで暮らしたいというニーズが強まっていることの表れとみていい。新築住宅は事業者側が用意した商品だから、ユーザーはその中から自分の好みにマッチしたものを選ぶことしかできない。
新築では得られない
それに対し、仮に5000万円の予算があれば3000万円の住宅を買い、2000万円掛けて自分の趣味を生かしたリノベーションを行えば、かなり〝自分らしい〟住まいが誕生する。
そこでの不動産コンサルタントの役割は、プロの立場からの様々なアドバイスであり、主役はあくまでもユーザーでなければならない。セッションでは「コンサルティングの本質は顧客のニーズを深いところから引き出すこと」とパネラー3人の意見が一致した。
実はこの前日、同センターと明海大学は「不動産流通に関する研究交流のための協定」を締結した(写真右下)。両者は今後、不動産ストックの活用促進方法などの研究を共同で行っていく。当然優れた不動産コンサルタント育成も視野に入れている。
同センターの不動産コンンサルティング技能試験(合格者には公認不動産コンサルティングマスターの称号が与えられる)は、前述の通り25周年を迎えたが、日本で唯一の明海大学不動産学部も今年4月に25周年を迎えている。
25年前といえば、ちょうど不動産バブルが崩壊した時期である。以来、我が国の不動産市場は「キャピタルゲインからインカムゲインへ」、更には「フローからストックへ」という流れを強めると共に、コンサルティング化が確実に進んでいる。今回両者の協定はその象徴とも言えそうだ。
ストック市場では、住宅を高齢者世帯から子育て世帯へというように異なる世代間で流通させることが多い。そのため思い切ったリノベーションなど、アイデアと創造力が求められる。だからこそ、「ストック再生は買い手にとっての新たな価値創造である」と中城康彦氏は言う。
時代は経済拡大を目的とした〝大量フロー〟の時代から、ストックに手を加えて自分らしさを実現する〝自己実現型社会〟へと移行し始めたようだ。 (本多信博)



















