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スタンダード会員限定神奈川住宅公社 活性化と入居者の健康増進 健康寿命の延伸に取り組む浦賀団地 保健福祉を学ぶ女子大学生が入居 新たなコミュニティを形づくる

住宅新報 2017年6月13日 号 11面

住まい・くらし
  • 白色を基調に綺麗にリフォーム

    1 / 2白色を基調に綺麗にリフォーム

  • コミュニティ活性化に取り組む

    2 / 2コミュニティ活性化に取り組む

 集会所で開催されたクラシックコンサートのように、彼女たちには、調和(シンフォニー)の役割があるかもしれない||。保健福祉を学ぶ女子大学生たちが「団地活性サポーター」として、「若者と高齢者」「交流」「健康増進」の要素をつなげ、地域で新しいコミュニティを形成・強化する。そんな新しい取り組みが神奈川・浦賀の団地内で始まった。若者の居住によって期待される、地域の活性化にとどまらない試みだ。

 昨年4月に神奈川県住宅供給公社と神奈川県立保健福祉大学が連携協定を締結した。同公社のケア付き高齢者住宅など、施設や団地に住む居住者の「健康寿命の延伸」を目指していく。いつまでも健やかな生活を送れるように「食事・栄養・体力づくり」を中心に、連携してサポートする体制を整える。

 連携により、施設や団地で栄養調査の研究を行い、健康教育プログラムを開発。健康的な食事メニューを共同で企画し、「食」を通じて介護予防を促進させ、食育セミナーを開催する。

元気をもらう

 この取り組みと歩調を合わせ、女子大学生たちが団地に移り住み、「地域の暮らしと調和した彼女たちの活動から、元気をもらいたい」(同公社高齢者事業部運営課課長の染谷良太郎氏)と、団地活性化策の一つとして新たなコミュニティを形づくる。高齢化・衰退化が進む団地を活性化させたい現在の居住者や同公社、健康栄養調査の場を求めていた同大学、一人暮らしをしたい大学生たちのそれぞれの思いをうまく叶える仕組みとなる。

 昨年9月に団地活性サポーター制度を発足させ、同年10月に同大学で説明会を開き、応募した女子大学生たちは今年2月から入居を始めている。女子大学生たちが入居するのは横須賀市東部に位置する浦賀団地(横須賀市浦上台)だ。京浜急行本線・浦賀駅から少し急な坂道を登ると、4~5階建て全11棟が立ち並ぶ。周辺は戸建て住宅が広がっている。

 ただ、団地に新たに移り住むのは、看護・栄養・リハビリテーション・社会福祉の学科から成る大学で保健福祉を学ぶ学生だ。将来の看護師や社会福祉士、管理栄養士のタマゴたち。単純に若者が移り住むのではない。学生ならではの視点だけでなく、専攻分野を生かした地域での取り組みが期待されている。

夢の一人暮らし

 更に、彼女たちの望みを叶えることにもなる。自治会の加入や地域活動の参加、毎月のレポート提出が条件となるが、通常よりも割安の家賃で入居できるため、親元を離れ、夢の一人暮らしを実現できるからだ。

 入居して3カ月程度が経つ、同大学社会福祉学科2年生の女子大学生は、「大学近くの賃貸マンションに住んでいましたが、地域でのつながりがありませんでした。この団地では、いってらっしゃい、ただいまなど、気軽にあいさつできて、交流があってうれしい。これからが楽しみです」と期待で胸がふくらむ。

 もう一人の同級生も、「家事の練習がしたくて、ここでの一人暮らしを選びました。生活費をアルバイト代から充てるので割安な家賃は助かります。帰宅時間と入居者の方々との時間帯が合わせづらいので、これから定期的に交流できる機会をつくっていきたいです」と、団地ライフを楽しんでいる。

 それぞれの親からは「一人暮らしを楽しんで」と特に心配されることもなく、送り出されているようだ。

まちに新しい風

 地元では、「住んでもらえるだけでうれしい。顔を合わせてあいさつを交わすだけで、高齢者にとっては日々の生活に張り合いが持てる」(地元自治会の副会長)と歓迎ムードで盛り上がる。団地活性サポーター制度発足前の昨年2月に続き、今年3月にも彼女たちの紹介を兼ねてクラシックコンサートを団地内の集会所で開催。女子大学生の参加による同様なイベントの開催を熱望する声が上がる。

 彼女たちの存在自体が団地という一つのまちに、その若さで新しい風を吹き込む。かつてのように子供から大人、高齢者までが明るく健やかに、それぞれの生活スタイルで調和しながら過ごす暮らしを地元では描いているのだ。

 こうしたムードを追い風として、彼女たちを含めて既に住む7人や今後、新たに移り住む学生たちと共に、団地活性サポーターによるサークルを立ち上げる予定。同大学から顧問が入る大学公認の組織。公式の活動として地域で活躍できることになる。

 具体的な活動内容はこれから決めていくが、「学業に支障のないように、まずは従来からのイベントなどに参加してもらいたい。自分たちができることから始めてほしい」(同公社の染谷課長)と期待を寄せている。

 実際に女子大学生たちが住むのは団地の4階や5階。高齢者には負担の大きい上層階から1階や2階に転居してもらい、その空き部屋の上層階に女子大学生たちが住む。階段を歩く上り下りの合間も、入居者たちと触れ合う機会となりそうだ。

 それぞれの部屋は白色を基調に内装をリフォーム。少しでも住みやすいよう、ふすまを取り払い、ワンルーム風とした。洗濯機置き場はなく、エアコンも自分で付ける。前述の彼女たちは共に、テレビ付きインターホンが当たり前の世代だが、「玄関ののぞき穴やガスの元栓から操作する風呂釜は見たこともなかったが、それでも新鮮。日当たりや風通しがよく、収納もたくさん。過ごしやすいです」と、不便さを感じていないようだ。

地域と交流したい

 今回の入居については2人とも、「一人暮らしを叶えるだけでなく、何よりも、コミュニティ活動がしたくてこの団地に入居しました」と話す。急な坂の上の団地の立地、少し古めの住設備でも、「地域と交流したい」「大学での勉強を生かせる」など、自身が思い描くライフスタイルが実現できる環境が整っているからだ。

 空室対策の観点からは、こうした学びの「体験の場」を提供され、入居者が望む「生活のストーリー」を描けるのであれば、何も最新の設備が揃っていなくても住まいや暮らしの選択肢になるようだ。

 団地活性サポーター制度は始まったばかりだが、既に他の自治体から視察が来るなど、今後の取り組みが注目されている。   (坂元浩二)

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