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スタンダード会員限定創造的な人々を誘致 街をブランディング 人から始まるまちづくり

住宅新報 2017年5月23日 号 13面

住まい・くらし
  • クリエイターたちが自由に改装

    1 / 2クリエイターたちが自由に改装

  • アイデアから価値を生み出す

    2 / 2アイデアから価値を生み出す

 千葉・松戸駅周辺の半径500メートルのエリアを仮想都市「MAD CITY」として、民間企業によるまちづくりのプロジェクトが進行する。10年にプロジェクトを開始して以降、クリエイターや芸術家などを段階的・戦略的に集積させており、クリエイティブな自治区への発展に向け、地域に新たな産業を創出するコミュニティを形成している。その一つの手段が中古不動産ストックの利活用だが、単純なハード面だけの開発手法とはまた違った側面がそこにはある。〝人〟によるまちづくりだ。

 利益を追求するベンチャー企業でありながら、「地域の衰退」を解決するソーシャルビジネスの要素も併せ持つ、まちづくりクリエイティブ(千葉県松戸市)がまちづくりを仕掛けている。必要な人を誘致し、自発的なアイデアやアクションを引き出すことで、まちを変えている。その多くがアーティストや若手クリエイターたちで、「彼らの活動を発信することによって更に人を呼び込む、新しい人の流れを生み出している」(寺井元一代表)。

中古ストック活用 シェア住宅のように

 その構想は地域コミュニティや歴史的建造物、アートなど、様々な分野を横断しているが、分かりやすい取り組みの事例は「中古ストック」の利活用だ。同社が転貸するサブリースの手法を使う。

 例えば、築古マンションや築100年を超える古民家、昭和期の一軒家の建物にデザイナーやアーティスト、料理人、ダンサーたちが住み、スタジオやテナントが入る。旧ファッションホテルでは、国内外のアーティストの滞在・制作支援拠点や若手クリエイターのオフィスなどに使われ、音楽家や画家、パフォーマンス集団が集う。かつての宿場町のように、現代の芸術文化が行き交うポイントとなっている。

 共有スペースでは入居者が食材やソファ、照明などを持ち寄り、BBQなどのイベントを開く。言わば「シェア住宅」のスタイルで、普通の賃貸物件では珍しい入居者同士の交流がある。同じ建物に住む人たちを引き合わせ、最近ではすぐに警察を呼ぶような騒音問題などでも、当事者同士で話し合える雰囲気を醸成する。

入居者がDIY改装 家賃アップを還元

 これらの取り組みを見れば、築古物件をサブリースで転貸しているだけのようにも見える。

 だが実は、これらの物件は、「中古ストックならば何でも扱いたい」(寺井代表)と、食品でたとえれば、形崩れしたもの、キズものなのだ。ゴミが山積し、床に穴が開いている物件もある。平均で築50年を超えて空室が続く市場価値の低い未活用な物件だ。

 そのため、基本的に入居者自身がDIYで改装する。原状回復は同社が保証してリスクテイクする分、入居者にはリスクがない。壁紙や床の張り替え、バスやキッチンの交換、間取りの変更まで、自分好みに空間をアレンジできるため、入居希望者は自然とクリエイターや芸術家たちが手を挙げる。入居したアーティストたちがどんどん改装を続けるので、内装の造作物の芸術性の高さなどから、室内空間のグレードアップに期待できる。新築家賃とほぼ変わらない築40年の物件もある。退去時には、ほぼ家賃を上げられる状態となり、改装を手掛けた退去者には、最大で家賃上昇額の3カ月分をキックバックする。退去時にボーナスが出るのだ。

 家賃上昇額を業務委託費として使う仕組みもある。退去者が料理人ならば料理教室、写真家ならば個展を開いてもらい、委託費として支払う。通常ならば自費で個展を開くところ、逆に仕事としてお金をもらう。休日に自身の好きで得意な分野を披露でき、ある種の仕事づくりや、後々の起業支援にもつながるため、入退去を重ねる人もいる。入居者はHPだけで募集し、略歴や作品集などから審査する。室内空間を発想豊かに創造してくれるような人に貸すためで、「周りにどんな人たちが住んでいるのか自体も、建物の価値につながる」(寺井代表)。

地域ブランディングへ 新しい世代に引き継ぐ

 ただ、中古ストックの利活用は、同社にとっては手段に過ぎない。本来の目的は、まちの暮らしぶりを変える「地域ブランディング」にある。まちを再創造する上で、デザインやクリエイティブの手法を使ってハードを利活用し、必要な人たちをまちに呼び込む。衰退が続くまちに今、必要なのは、アイデアを生み出して実践すること。これが冒頭に記した「人」によるまちづくりで、創造的な人がそこに必要だから、その住まう場所として不動産を扱う。

 地域ブランディングとは何か。例えば、東京の自由が丘や中目黒、吉祥寺は、そのまちに「住んでみたい」「店を持ちたい」という人が多い。しかし、そこに厳密で合理的な理由はないはずで、「おしゃれ」、だから「お客さんが集まる」などといった、あくまでもイメージ。しかし、それこそがブランディングだ。

 通常の不動産会社は部屋の設備や間取りで勝負する。同社では、そこに集まる人がどんな生活をするかでまちが変わっていくと考える。創造的な人を軸として、一つの部屋、建物から、まち全体をブランディングする。入居した人たちと共に、「新しい暮らし方、生き方、まちとの関わり方を行政区域にとらわれずに価値観の近いエリアで実現させ、エリア自体の文化をつくっていく」(寺井代表)。

 そこには、短期的なまちづくりではない、その歴史を踏まえた新たな価値をつくり、新しい世代に引き継ぐまちづくりがある。創造的な人々を集め、彼らがアクションを起こす。地域ストックとしての建物を生かし、住まい手と共にソフトの価値を生み出しながら、エリア全体の価値の向上につなげている。            (坂元浩二)

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