資本主義の終焉?
日本は〝ゼロ金利政策〟が20年も続いている。低い金利を維持し続けなければならないということは、資本主義経済がうまくいっていない証拠である。
どれほど金利が下がっても資金需要が盛り上がらないということは、資本を投下して利益を上げようとする人や企業がいっこうに増えないことを意味しているのだから。
人口減少、少子高齢化という暗雲が日本の将来を暗く重くしているからだろうか。しかし、日本の企業経営者がそのように先を見越して苦悩しているとすれば、20年の間には新たな成長分野を見いだす人が出てきてもいい。
ところが大企業の内部留保は、03年以降一貫して増え続けている(02年167兆円→08年242兆円→15年313兆円)。そこには何らかの別の要因が働いているように思える。大企業ゆえに意思決定が難しいとか、東京一極集中への過度の依存とか。
逆に言うと、中小零細企業が圧倒的に多い不動産業界(資本金5000万円未満が93%)は、チャンス到来である。時代の変化、社会構造の転換にもスピーディに対応できるからだ。
中小にチャンスが
滋賀県にある「びわこホーム」(高木光江社長)は、09年9月にそれまで導入していた営業マンの歩合制を廃止し、社内評価を加味した完全固定給制に切り替えた。
09年といえばリーマンショックの翌年だが、時代の変化を感じた当時の上田裕康社長(現会長)が、「これからは顧客に寄り添う、質の高い優秀な営業マンを育てていかなければならない。そのためには社員の定着化を図る必要がある」との思いから決断した。
当時の上田社長の必死の説得もむなしく、当時のトップ営業マン4人が辞めてしまうという深刻な事態に陥ったが、〝新築着工棟数地域No.1〟の地位はその後も確保している。
横浜市港北区、東横線綱島駅近くで不動産業と建設業を営む「夢工房だいあん」(光田大蔵社長)は14年4月に、第三の柱として訪問看護事業を始めた。
「老舗企業として、これからも地域になくてはならない存在になるためには、看取りまでも行う看護・介護サービスを立ち上げるしかない」(同社長)との重い決断があった。
医療行為ができる看護師資格を持つ社員と、パートを含めた社員が連携して一つのチームをつくり、地域の高齢者宅を巡回している。高齢者世帯からの訪問要請はその後も増え続けており、会社側の態勢が追いつかないほどだという。
利潤はあとから
大和ハウス工業・樋口武男会長の名言集に「儲かるからではなく、社会が将来何を必要とするかという視点から考えれば事業は成功する」という指摘がある。今後は高齢社会の進展が地域密着の不動産業の役割を大きく変えていくことは間違いないだろう。
寿命が延びているため、日本は高齢者の単身世帯が増加している(グラフ参照)。 東京・本郷のNPO法人「街ing本郷」は、一人暮らしの高齢者と学生が同居し、互いに助け合う〝ひとつ屋根の下〟プロジェクトを始めた。学生は地域活動への参加を条件に月額3万8000円からの安い家賃で入居することができ、自宅の空き部屋を貸す高齢者は一人暮らしの孤独感を癒すことができる。
ただ、こうした取り組みを発展させるためには、同居する者同士の相性がうまく合うことが重要だ。そこで地域の事情に精通し、人を見る目もある宅建業者こそ、こうした高齢者と学生とのマッチングサービス(まさに仲人業)を業務に取り入れていくべきではないだろうか。
「街ing本郷」は、次第に寂れゆく商店街に危機感を抱いた本郷界隈の商店主たちが7年前に立ち上げた。若い人たちを街に呼び込み、地域の活性化を図りたいという思いからだ。
目立ち始めたアパートの空室や、単身高齢者の空き部屋など地域のストックをうまく活用すれば、若い学生も商店主もアパートオーナーも高齢者も、みんなが幸福になるという実例だ。
樋口会長の指摘通り「儲かる」からではなく、社会(誰も)が幸福になるためには何が必要かという発想こそ、将来のビジネスにつながっていく。資本主義に代わる新たな社会システムのヒントもそこにある。 (本多信博)


















