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スタンダード会員限定街ing本郷 シニアと大学生が共に暮らす NPOがマッチング 心地よい家族の関係のように

住宅新報 2017年4月11日 号 11面

住まい・くらし
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 文京区本郷。東京大学やお茶の水女子大学などの学究の徒が集まり、明治の頃から「書生」の街として知られる。かつての書生は、下宿人として地域で共同生活を送り、大学に通った。それが、この現代によみがえっている。

 企画したのはNPO法人「街ing本郷」で、和菓子屋や薬局、不動産屋、便利屋などの商店主たちが、隣接する町内会の垣根を超えて10年に立ち上げた。

 代表理事を務め、3代目として鮮魚店を営む長谷川大氏は「我々は商売人のおっちゃんの集まり。若い人が増えれば、お店のモノを買ってもらえる。空き家や空室対策にもなるから」と、下町らしい軽妙な語り口で企画の意図を説明する。

 だが、地域を愛する気持ちは強く、まちが抱えている危機を敏感に感じ取り、それは始まった。

 以前は商店会や町内会が地域活動の中心だった。しかし、少子高齢化や長引く景気の低迷により、役員の担い手や後継者不足が商店街に影を落とし始める。加盟店が減る一方、商店会に加盟しない新規出店やチェーン店が増え、コミュニティ活動の人材面、資金面が懸念されたという。

 古くから住む人と新しい住民のつながる場がなくなってしまう……。

 まちづくりに必要なのは「人」。特に若者の参加を求めたいが、その仕組みがなかった。そこで長谷川代表らが立ち上がる。町内会、商店会、PTAなどにNPOが横串(よこぐし)を刺し、まちを点や線でなく「面」として捉え、「元気あるまちづくり」を自らで行う新たな枠組みを考え出した。

〝まちの書生〟として

 アイデアは古風かつ斬新だ。最初に始めたのが「本郷・書生生活」プロジェクト。大学の近くに住みたいが家賃が高い、一方で周辺には空室が増えた。そうした大学生と家主をマッチングして双方の課題を解決する。大学生には地域活動への参加を条件に、奨学生優先で月額3万8000円からの低廉な家賃で入居してもらい、経済的に支援する。家主にとっては慢性的な空室を解消できる。大学生は「まちの書生」として地域のコミュニティ活動に参加するため、まちに活気を与えることにもなる。今では口コミも手伝い、入居待ちもいるほどだ。

 入居条件の地域活動は「各自ができることを考えさせている」(長谷川代表)といい、自主性に期待して参加を促している。

 例えば、夏休み講座として小学生の宿題の相談に乗る、夏祭りを手伝う、花壇を掃除するなど、無理のない活動だ。今年は「美大生が入ったので、子供向けの工作教室を開いてくれるかも」(長谷川代表)と今から待ち遠しく、期待を込めている。

 この取り組みを発展させたのが、14年度の国の助成事業になった「ひとつ屋根の下」プロジェクトだ。地域活動を条件に低廉な家賃で提供するのは同じだが、シニアが住む自宅の空き部屋を大学生が間借りするのが特徴。共に孤独になりがちな生活をサポートし合い、共生する。

 一緒に夕食の席につき、日々の生活で「いただきます」「いってらっしゃい」「ただいま」と自然にあいさつできる関係性を醸成し、心地よい家庭の場をつくる。シニア側にとっては、これまで不安だった夜間の防犯や災害、緊急時の不安を軽減できる。

 他人同士の共同生活でも、事前の2カ月にわたるマッチングで一定のルールを決めるので、これまでトラブルはないという。大学生からは「シェアハウスよりもプライバシーがあって、一人暮らしほど寂しくない」など絶妙な距離感が支持され、その親御さんからは「建物は古いが、都会の知らない人ばかりの中に子供を送るよりも安心する」と好評のようだ。

共同生活の難しさ

 課題も浮かび上がってきた。「若者との交流やイベントの参加は願っているが、共同生活まで望むシニアは意外と多くない」(長谷川代表)。

 一人の自由な時間に満足し、生活上の大きな変化を望まず、一方の学生も地域活動になじめずに辞退するケースもある。同居のための設備改修費用の負担、知らぬ者同士の同居のために親族や周囲の理解も必要だ。成功事例でも、生活動線が違う間取りや、「離れ」を間借りして、ほぼ下宿に近い形となっている。

 ただ、プロジェクトは、とん挫したわけではない。入居希望者に加えて家主の募集も始めた。更には、NPOのサブリースで築60年のレトロなつくりながらもリフォームを行い、Wi-Fiも完備した「生きがい付き高齢者住宅」として、学生やシニアにも貸している。

 今後の展開では「経年のRC造や、大学・社員寮の掘り出し物件があれば、不動産会社と連携したい」と新たな物件を探索中だ。ただし、これは壮大なまちづくりプロジェクトのハード面での施策であり、このほかのソフトの施策も充実させていく。

 シニア宅に訪問する「片付けお手伝い」、芸自慢の学生が漫才やマジックを地域のお祭りなどで披露する「出張出し物」、一緒に調理して食べる「ひとつ釜の飯」、学生がシニアをおもてなしする「おやつ会」など、学生とシニアが共に楽しめるイベントを豊富に用意する。こうした商店街、企業、学校、団体、行政が自由につながる仕組みの中で、それぞれが強みを生かし、それぞれを「つなげる役割」を担う。

 これらの取り組みは京都府でも仕組みが導入され、着実に他都市に広がっている。長谷川代表の講演活動によるPR効果も大きい。更に、「○○・書生生活」など○○に地方名を入れて、各地域が主体となって展開できるよう「仕組みづくりなどのノウハウを伝えたい。新しいまちづくりの担い手は、よそ者、若者、ばか者。取り組みに賛同して活動の要となるコーディネーターを増やしていきたい」(長谷川代表)と、〝まちのおっちゃんたち〟の活動は続く。      (坂元浩二)

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