伸びるシェアハウス 高齢者の住まいと〝宿泊基地〟に
住宅新報 2017年1月31日 号 11面
国交省が補助金
シェアハウスの累積供給実績は東京を中心に全国で約4万室。まだまだニッチな市場だ。しかし、年3割増加しているというから、時代性を感じさせる事業であることは間違いない。
今後も市場拡大の可能性は高いと見るべきだろう。国土交通省もシェアハウスを空き家有効活用の有力候補と見ており、来年度から補助金制度を創設する方針を明らかにした。
これを機に、一般社団法人日本シェアハウス協会には、不動産業界の枠を超えた一般企業からの参入相談が相次いでいる。全国自治体からの問い合わせも多く、空き家増大に悩む某市は、戸建て空き家を学生向けのシェアハウスに改築して若者人口を増やす構想を進めている。一般の賃貸住宅市場が飽和状態になりつつあることから、大手ハウスメーカーの関心も日ごとに高まっているようだ。
同協会に問い合わせや相談が殺到する理由は明らかだ。シェアハウス事業は〝管理ノウハウ〟のかたまりだからである。その一つに〝清掃〟がある。
清掃技術が土台
ワーク&ライフイノベーターの響城れい氏(日本シェアハウス協会理事)はこう話す。 「シェアハウス事業の土台は清掃です。他人同士、あるいは国籍の異なる人たちが共同生活をするわけですから、共用部分の清掃、リビングなどの整理・整頓が行き届いていないとトラブルや苦情のもとになります。また、入居検討者による内覧は日常的にありますから、不意に見に来られたときでも、きれいに清掃されていなければ入居をやめてしまうでしょう。入居率が下がれば、コスト削減で専門業者に依頼する回数が減り、更に汚れがひどくなるという悪循環に陥ります」
川崎市にある「シェアヴィレッジ川崎」は〝多世代&多国籍共生型〟シェアハウスである(4階建て・全38室)。京浜急行大師線小島新田駅から徒歩9分にある企業の社員寮を改修した。14年3月のオープンから3年近くが経過し、清掃の品質確保・向上が大きな課題になりつつある。
そこで響城氏が講師となり、物件を管理・運営しているメイショウエステートの社員5人に清掃の意味、仕方、仕上がりをきれいに見せる方法、拭き掃除の基本などを講義した。社員は、入居者から汚れの落とし方を聞かれたりしても分からないことが多く、外注している専門業者の仕上がりチェックも知識がなければできないからだ。ちなみに、同協会は入居者が仕事として共用部の清掃を請け負う仕組みも導入しており、「家庭掃除・収納士」資格認定講座を主催している。講師は響城氏だ。
多世代共生型に関心
シェアハウスにはそれぞれのコンセプトを掲げたものが多い。外国人との交流で語学力を身につける、女性専用でダイエットを目指す、楽器が弾けるスタジオ付きなど多彩である。やはり、なんらかのコンセプトをもっていたほうが入居者間のコミュニケーションがうまくいくようだ。
そうした中、超高齢社会を背景に今後注目されそうなのが、〝多世代共生型〟シェアハウスである。その理由は、増加する単身高齢者の新たな住まい方となる可能性があるからだ。異業種で参入を検討している某大企業は、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)のように食事や生活相談などのサービスがなくてもかまわない元気な単身シニアのニーズを掘り起こすことができないか検討している。
「多世代共生型」を奨励し、「シェアヴィレッジ川崎」のように既に会員社による実績もある日本シェアハウス協会の山本久雄会長はこう話す。
「一人暮らしの高齢者は家に閉じこもるよりも、いろいろな世代と交流しながら暮らしたほうが楽しいのではないか。また互いに異なる生活スタイルを利用して助け合うこともできるから、生活に張りが生まれます」
35年には日本の単身高齢者世帯は762万人にも達する。うつ病や認知症など一人暮らしが起因するといわれる病気などのリスクを避ける意味でも、多世代共生型シェアハウスの役割が徐々に重みを増してくる可能性は十分にある。
更に、同協会は今年は〝民泊新法〟の制定をにらみシェアハウスの空室を活用した民泊事業や、全国のシェアハウスをネットワーク化して、リタイア世代が全国各地を観光旅行するための〝宿泊基地〟にしていく構想もある。時代の追い風を受けたシェアハウスという芽をどこまで大きく伸ばせるのか、同協会への期待は大きい。 (本多信博)



















