地域の資産、京町家を再生 フラットエージェンシー ■下 飲食店と宿泊施設に 若手起業家支援し、地域活性も
住宅新報 2016年5月31日 号 13面
「単なるリノベーションではなく、起業意欲をもつ若者を支援し、また地域の人たちの交流が生まれる場にしたかった」。フラットエージェンシー(京都市)の吉田創一社長は、今回の京町家再生への思いをこう話す。
4月に改修した京町家の延べ床面積は約90m2。小ぶりな建物ながら、あえて1階を飲食店「日本酒バル」に、2階はゲストハウスと用途を分けた。飲食店の設備や内装は事前にある程度造り込み、借り手の若手起業家が少ない投資額で事業を始められるようにした。
ゲストハウスは寝室(ベッド2つ)と和室、水周りを設け、4~5人が宿泊できる。改修にあたり〝和〟が感じられるように柱や梁を見せ、部分的に珪藻土の壁も残した。
観光客との交流も
京都では今、外国人観光客を中心に町家への宿泊ニーズが強い。1軒丸ごと宿泊施設に転用するケースも多いが、「この地域は人通りが多くない。飲食店と宿泊施設に分ければ、飲食店で観光客と地域住民が交流することも考えられる」(同社)。また、2階のゲストハウスには浴槽を設けずシャワーのみとした。 「宿泊客には近くの銭湯を利用してもらえれば、ここでも地域との交流が生まれる」
このように、地域活性化を目的に用途を分けることが出来た背景には法改正がある。ゲストハウスは簡易宿所の許可を取得した同社が運営する。4月に旅館業法施行令が改正され、簡易宿所の面積要件が緩和された。従来は33m2以上必要だったものが、少人数向けならば1人当たり3.3m2となった。今回再生した町家の場合、改正前ならば1棟丸ごと宿泊施設にするほかなかった。また100m2未満のため用途変更の建築確認も不要だった。
「町家を複数用途に再生した事例は珍しいのではないか」。法改正後、簡易宿所の認可を取得したのは京都市では同社が第1号という。同社は既に市内で町家を活用した4件の簡易宿泊所を運営しており、新たに宿泊特化型ホテルの開発も検討している。
42年前に吉田光一会長が創業。地域密着で仲介・管理業を手掛け管理戸数は6800戸に上る。昨夏、息子の創一氏に経営をバトンタッチした。 会長は「不動産会社の役割は〝よろず相談所〟。人と人を結びつけ、地域の課題を見つけて解決する仕事だ」と話す。活性化につなげる仕掛けとして、2年程前には本社近くの所有ビルの1階を地域交流型サロン「TAMARIBA」として開放。カフェやイベントスペースを設けた。展覧会など年間130回も地域住民によるイベント開催の場となっている。(井川弘子)




















