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スタンダード会員限定縁側塾 日本人の9割は農民だった

住宅新報 2015年6月9日 号 11面

連載: 縁側塾

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 自分にとっての国土、ふるさとを奪われる悲惨さを日本人は福島第一原発事故で知った。同じ悲劇が外国からの武力攻撃によってもたらされないという保証はない。しかし、今の日本ではそのような事態は全くの〝想定外〟である。

 原発再稼働を進めている人たちは、ふるさとを追われた人たちの悲哀が分かっていない。そして、万一の時には、またしても〝想定外〟を責任回避の理由にしようとしている懲りない人たちである。

 外国からの武力侵略は全くの想定外と述べたが〝拉致〟はどうか。外国の暴力によって日本人が違法に国外に連れ去られた。何ものにも代えがたい肉親を奪われたのである。

 にもかかわらず、日本政府は相手の対応を待つばかり。拉致された被害者を連れ戻すための主体的戦略を持つことができずにいる。その要因は今の国会論議、国民の生命と財産を守る安全保障についてのお粗末な論戦を見れば明らかであろう。

地方創生と不動産業

 失われゆく地方を取り戻すための「地方創生」は不動産業にとってどのような意味を持つのだろうか。

 東京一極集中と地方衰退は背中合わせ。だからどちらか一方に偏り過ぎればいずれ破綻する。都会と地方にバランスよく人が住み、共に発展する道を探らなければ持続可能な国土づくりは実現しない。

 行き過ぎた東京集中を是正するためには地方での暮らしに魅力を感じる人を増やせばよい。三代さかのぼれば日本人の9割は農民だったわけだから、誰にとっても地方は心のふるさとだ。さほど難しい課題ではないのではないか。

 その第一段目の作業として、まずは都会の人が地方の生活を体験する「ワープステイ」を推進したい。具体的には、例えばリタイアした団塊世代が東京圏にあるマイホームを5年間程度の定期借家権で子育て世帯などに賃貸し、賃料という新たな収入源を確保しながらお好みの地方に〝お試し移住〟するというものだ。こうした新タイプの住み替えを都会と地方の業者が連携し、全国ネットでサポートすることがこれからの不動産業の新たな仕事になる。

 気に入ればそのまま定住してもよいし、定期借家権契約が終了したら東京に戻ってくることもできる。国土交通省が近く策定する新たな国土形成計画の重要コンセプトである〝対流人口〟の創出になる。 対象をアクティブシニアに限定する必要はない。近年は若い世代の地方志向が強まっている。子供が生まれたのを機に、自然環境とコミュニティが豊かな田舎で子育てをしたいという〝子育て田舎留学〟派が増えているのだ。

空き家解消に貢献

 そうした明確な人生の目標があれば、これまでは親から相続したものの何となく空き家にしていた住宅を補修し、賃貸して〝留学資金〟に充てようとする積極的な動きも出てくるのではないか。

 これまでもライフスタイルに応じた住み替え行動はあったわけだが、今後はそれが「家の広さ」や「勤務先までの距離」といった数量的尺度ではなく、次元を変えた別の価値観のもとに広まる可能性がある。

 そのように新たに台頭してくる生き方や働き方に関する主義、イデオロギーをどう名付けるべきか。「里山資本主義」「公益資本主義」などのキーワードが浮かぶ。採算性よりも物造りそのものに情熱を傾ける日本古来の職人文化を象徴するならば「物造り資本主義」でもよいのではないか。

 地方創生担当大臣の石破茂氏は日本の防衛政策(安全保障)に最も精通しているといわれる人物で、かねてより危機感の強い政治家として知られている。

 日本人の心の原点ともいえる「地方」が本当に「消滅」してしまったら、この国は外国からの侵略がなくても、内側から瓦解していく危険性をはらんでいる。 (本多信博)

 

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