今週の糸口 ◇98 長期契約狙える定期借家
住宅新報 2014年6月24日 号 24面
連載: 今週の糸口
アットホームの調査によると、13年度首都圏での定期借家権による成約件数は6495件で、前年度に比べ5.2%減少した。このため、普通借家権を含めた全成約件数に占める比率は2.6%と前年度比0.2ポイント下落した。つまり定期借家権は一向に普及の兆しを見せていない。それどころか、かえって後退しているかのようだ。
普及阻む誤解
その理由は、「定期借家権は普通借家権よりも入居者の権利が弱く居住の安定が図れないから、定期借家権での契約は入居者から敬遠されてしまう」と仲介会社や家主が考えていることにある。いわゆる「正当事由制度」というもので普通借家権の場合、家主が入居者の意思に反し退去してもらうためには正当事由がなければならず、裁判で争っても認められる例は少ない。
しかし、居住の安定を図りたいのであれば、定期借家権でも長期の契約期間にしておけばいいのではないか。例えば、子供が小学校に上がるまでの5年間というように。入居者が途中解約することは床面積が200m2未満であれば事実上可能である。
しかし、同調査によると定期借家権での契約期間は平均2.4年となっている。普通借家権とあまり変わらない。定期借家権のメリットを生かしていないということだ。
定期借家権のメリットとは、言うまでもなく家主にとっては間違って入居させてしまった不良入居者を追い出せることであり、借家人にとってはそうした不良入居者がいないことである。それに対し、普通借家権のメリットは家主にはないし、借家人は家主から立ち退きを迫られたとき居住権を主張すれば、立ち退き料をもらえる可能性があるということである。
ウィン・ウィンの関係
つまり、定期借家権は双方にウィン・ウィンの関係が生まれるが、普通借家権は借家人だけにメリットがある。しかし、立ち退きを迫られることなどめったにないし、時代遅れの感も否めない。
そもそも肝心要の「入居者の権利」とは何だろうか。それは、家主に対し快適な居住環境の維持・確保を要求できることであり、立ち退き料を請求することではない。
地価高騰時代、家主が借家人から受領した何十年分もの賃料をはるかに超える立ち退き料を支払うよう求めた判決があった。そうした不合理な慣習はもはや過去のものとすべきである。そのような理不尽な制度が長く存続してきたことが、日本の賃貸住宅市場をいびつなものにし、家主と借家人との関係を根深い対立構造に仕立て上げてしまったのだ。
定期借家権の活用方法はいろいろある。例えば、今後は外国人を居住者として迎えることが多くなると思うが、国の習慣や文化が違えば思わぬトラブルが発生しやすい。そこで、お試し期間として最初の半年を定期借家権で貸すということも考えられる。
「定期借家権は、いつ追い出されるか分からない」という不安は妄想に近い。昔と違い、今は空室の発生を極力防ぎ、借家人の平均入居期間を1年でも長くすることこそ安定した賃貸住宅経営を実現させる鍵となっている。つまり、賃料を滞納せず、他の入居者や近隣住民に迷惑もかけていない〝普通の入居者〟を追い出そうとする家主はいない。
むしろ、これからの賃貸住宅経営を成功させる秘訣は、定期借家権で長期契約してくれる「お客様」を一人でも多く確保することである。
(本多信博)

















