今週の糸口 ◇97 将来、賃貸住宅が不足する?
住宅新報 2014年6月17日 号 11面
連載: 今週の糸口
社会はたえず変化しているから、その時代に生きている人たちにとって、社会は常に〝変革期〟にある。大事なことは、世の中の風潮に惑わされることなく、その変化の方向やスピードを冷静に、なるべく正確にキャッチすることである。
賃貸住宅市場の未来を予想するとき、分かっていることは「若年人口が減り、高齢者人口が増える」ということである。だから、今後は賃貸住宅の需要が減少し、空室問題は一層深刻化するのではないかと懸念されている。
しかし、ある大手賃貸住宅メーカーは、08年から30年までの22年間に必要となる貸家の新規供給戸数は890万戸で、年平均約40万戸と推計している。現在、貸家の着工戸数は13年度が37万戸、12年度は32万戸だったから、40万戸に届かず供給過剰どころか、むしろ供給不足となっている。この新規供給必要戸数は、過去のデータから賃貸住宅の滅失数や賃貸住宅に住む世帯数の推移などを予測し、算出した数値である。
下がる持ち家率
もし、この予測数値が正しいとすると、今後賃貸住宅市場に何が起こると見ればいいのだろうか。一つ考えられることは、若年人口は減っていくが、持ち家率が下がり、賃貸需要が強まるという可能性である。過去のトレンドをみると、35-39歳人口の持ち家比率は78年の58%から08年の46%へと低下している。大きく下がったのは83~93年頃までの前半で、後半は横ばいが続いている。25―34歳もほぼ同様の傾向を示している。
この要因は、前半は地価高騰で家の価格が上昇し過ぎたためであり、後半はデフレ不況で勤労者の所得が下がり続けているためと考えられる。
ちなみに、30-39歳の住宅ローン返済額の対可処分所得比率をみると、89年の13.2%から09年には19.8%へと上昇している。所得が下がっているため、低金利が続いているのに、持ち家比率が上がらない理由がここにある。
元気な高齢者向けを
今後、新規の賃貸住宅に対する需要が増えるもう一つの要因としては高齢者、中でも単身高齢者の賃貸ニーズが考えられる。単身高齢者は10年の466万世帯から20年には631万人へと増加する。
日本では高齢者の8割が持ち家に住んでいるが、一人暮らしになれば不便や不安、そして寂しさが募る。もし、住み慣れた町に多世代交流型などコミュニティが形成されていて、孤独死を防ぐ安否確認システムも備わった賃貸住宅があれば住み替えたいという気持が強まるのではないか。
ところが、我が国にはそのような健常な高齢者向けの賃貸住宅が少ない。高齢者住宅というと、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が思い浮かぶ。しかし、そうしたもの以上に必要になるのが、まだまだ元気だが、従前の自宅には住みにくくなってしまった人たちが住みかえたくなるような賃貸住宅ではないだろうか。
厚生労働省のデータによれば、75~79歳でも要介護者比率は男19%、女15%である。8割以上が元気な自立した高齢者なのである。こうした健康寿命をさらに伸ばせば、明るい高齢社会を築くことができる。
そのためには高齢者が若い世代と交流しながら、生きがいとゆとりを持って暮らすことができる、新たな生活拠点としての賃貸住宅が必要になる。(本多信博)

















