今週の糸口 ◇89 賃貸で花開く住文化
住宅新報 2014年4月22日 号 11面
連載: 今週の糸口
高齢者の単身世帯や離婚に伴う母(父)子世帯の増加など、家族構成の多様化が住まいづくりに影響を及ぼさないはずがない。
戦後の住宅難や高度経済成長時代、住宅供給は社会の基盤づくりであった。しかし今は、多様化する世帯の個々のニーズに応えるべく利便性、機能性、テーマ性がより重視されるようになってきた。
衣食住のうちの「食」に例えれば、住宅もグルメとまではいかないとしても、ようやく住文化という花が開き始めたのではないか。
ローン並みの家賃
かねがね思ってきたことは、日本に住文化が根つくためには、良質な賃貸住宅の普及が不可欠だろうということだ。所有しているか、借りているかは、住宅そのものの魅力とは本来関係がない。
だから賃貸でも魅力のある物件であれば、所有したくなる以上に、借りたくなるはずである。「ローン並みの家賃で借りられる」というセールストークが使える賃貸住宅がなければ、本当はおかしいのである。
積水ハウスが3月に、愛知県一宮市で竣工した賃貸住宅タウン「ガーデンコート花水木」(11棟90戸)は、和風テイストの住棟もあるなど、まさに周辺の分譲マンションと住環境そのもので勝負できる物件となっている。
分譲マンション市場では今、その購入者の多くが「家賃を払い続けるのはもったいないから」という理由で、賃貸住宅から住み替えている。こうした民族大移動的な、賃貸から分譲へという一方的動きが続くことは、我が国の住文化の発展にプラスになるとは思えない。
家計の生涯収支や資産性の有無といった視点ではなく、純粋に住まいとしての魅力、「そこに住みたいか、どうか」という次元で、持ち家と賃貸住宅が競争してこそ、真に奥の深い住文化が育つはずである。 (本多信博)

















