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プレミアム会員限定〝ルビコン川〟の畔で 3.11後福島を照らすもの 14 世界の常識 核シェルターという安全を選択

住宅新報 2014年1月7日 号 13面

連載: 3.11後福島を照らすもの

住まい・くらし
日本核シェルター協会が調べた、世界各国の人口あたりの設置率。日本の低さが際立つ。「やや古いデータなので諸外国はより設置率は高まっているはず」

日本核シェルター協会が調べた、世界各国の人口あたりの設置率。日本の低さが際立つ。「やや古いデータなので諸外国はより設置率は高まっているはず」

 自民党政権はここにきて原発ゼロ方針を見直し、「安全が確認されたものから順次再稼働させる」意向だ。いわく、ベントフィルターがついているか、動く可能性のある活断層があるか、避難計画は立てられているか等々だ。

遠い安全確認

 だがいずれの条件も安全確保とはほど遠い。例えば、活断層。そもそも活断層があってもなくても巨大地震が来れば、その震度に応じて建物は揺れる。福島第一原発事故の報道では何度も「免震重要棟」という言葉が出たが、肝心の原子炉建屋には免震構造は採用されていない。

 国土地理院のデータによれば3.11の大地震では福島第一原発から第二原発一帯にかけ50センチの地盤沈下、水平方向では東側に2.3メートルの移動が確認された。東京電力自身も1号機から4号機で平均0.66メートルの地盤沈下を認めているものの、地盤沈下による建物の傾斜は「なかった」としている。

 もちろん、これで「なかった」とするわけにはいかない。問題は建屋でなく中の配管だ。原発サイトでは何キロメートルにも及ぶ配管が建屋の内外に続いており、事故前から各地の原発では、地震など起きていないにも関わらず、破損や汚染水漏れ、ナトリウム漏れなどを繰り返していた。今回その脆弱な配管の地盤が数分間も揺れ続け60センチ下がった、数メートル動いたとなれば、どこか破損すると考えるのは当然だ。

 実際、原子力安全保安院も、「地震で配管に0.3平方センチのヘアクラックが入ったと考える」と結論づけている。国や東京電力は津波による電源喪失を事故の主因としているが、津波前に原子炉はコントロール不能になっている可能性は高い。この点については、民主党衆院議員の川内博史氏が当時、元原子力発電所エンジニアの渡辺敦雄氏らと指摘しているが、津波主因説に押しつぶされてしまった。

 津波説を採れば、過酷事故の対策を免れる原発は少なくない。たとえば、四国電力の伊方原発など内海に面した原発は大規模な対策はしなくてもいい。しかし地震説を採れば、全国の原発のすべてで再設計、補強工事が求められる。その費用を誰がどう捻出するのか。

 国は今回の事故を受けて、原発周辺の避難計画を見直し、新たに4つのゾーンを引き直している。原発から半径およそ5キロが「予防的措置準備区域」、半径8~10キロが「緊急時計画区域」、半径30キロ以内が「緊急時防護措置区域」、半径50キロ以内が「放射性ヨウ素防護区域」だ。このうち30キロ圏内は、行政が責任をもって避難計画を立て、避難経路や避難先を確保しなければならない。

 しかし対象自治体では、避難先を確保できないところもある。避難者には寝たきりの老人や車椅子の人、目の見えない人、生まれたばかりの子どもを抱いた母親もいる。言葉の通じない外国人もいるだろう。避難経路も先述した伊方原発などは、細い半島の付け根にある。そこから先の半島の住民はことが起こった時、陸路の避難は不可能だ。

 再稼働自体あり得ないと思うが、安全を確保するという限りにおいては、いかに放射能から防御することを考えるべきだろう。その一つの選択肢が「核シェルター」である。もともと核爆発と高線量の放射能から防護するために造られている核シェルターは、今回の事故のような過酷事故に十分対応できる。それだけではない。外気と遮断する構造であるため、津波からもしっかり身を守ることができる。

スイスは100%

 NPO法人「日本核シェルター協会」によると、「核シェルターの設置は欧米では当たり前」という。同協会の調べではスイスの人口あたりの核シェルター設置率は100%。家だけでなく公共施設などいたるところに核シェルターが設置されている。ほかにもイスラエルが100%だ。いずれも国防意識の高い国として知られるが、このほかノルウェーが98%、米国が82%、ロシアが78%、英国が67%など欧米は軒並み設置率が高い。アジア圏でもシンガポールは54%を確保している。

 シェルターには、米国のようなハリケーンシェルターがあるが、核シェルターでは2週間は過ごせることが国際基準という。

 なぜ2週間かと言うと、「爆発で放出される放射線量は2週間で1000分の1まで減衰するため、そのくらいであれば外で徐々に活動できる」(同協会)というわけだ。

 ただ2週間と言っても、外からすぐに食料や水が調達できるわけではないから「水や食料はできるだけ備蓄する。薬などは100日分確保する」のが一般的だ。

 「スイスでは家を新築する際には核シェルター設置が義務づけられており、補助金も出ていた」(同協会)が、「近年この法律が解かれた。核シェルターの設置が国民に定着したからだろう」(同協会)

 日本はどうか。同協会の調べでは設置率はわずか0.02%である。なぜこれほど低率なのかというと、「被曝国である日本では核シェルターと言うだけで、『核戦争を起こそうとしている』という非難を受けたり、一人だけ生き残るつもりなのかと、取り合ってもらえない」(同協会)からだ。

 他国では常識の核シェルターが、唯一の被爆国で、レベル7の原発事故を起こした国で安全確保の俎上にも乗らないのだ。この国に、本当に市民の安全を確保する気があるのなら、まずは原発および核処理施設から半径30キロ圏の住民が、最低2週間以上過ごせる核シェルターの設置を自治体に義務づけるべきだろう。もちろ原資は各電力会社が出す。再稼働論議はその後だ。 (フリーライター・佐藤聡)

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