今週の糸口 時代を担う 3 デフレ脱却は企業の責務
住宅新報 2013年10月15日 号 11面
連載: 今週の糸口
アベノミクスの第一義はデフレ脱却である。日銀による異次元の思い切った金融緩和。政府による大胆な財政出動。成長戦略を推進する規制緩和など日本再生に向けたかじ取りが政府・与党主導で進む。
しかし、デフレとは物価が継続して下落する現象をいう。物価は供給と需要の関係で決まるが、モノの生産量(供給)を決めているのは企業だし、購買力(需要)である賃金を決めているのも企業だ。つまり、デフレ脱却の先導役は企業でなければならない。
人口減、少子高齢化社会がデフレ脱却の大きな足かせとなっていることは認めるが、企業経営者が人口増加、地価右肩上がり時代のビジネス志向を捨て切れず、未だに量的供給を優先していることも、価格低迷の要因ではないか。
下がる住宅価格
進化を続ける携帯端末にデフレの声は聞かないが、日本の住宅価格はバブル崩壊以降一貫して下がり続けている。近年公表され始めた指数(08年度平均=100)を見ても、08年4月(105)から13年5月(93)までの5年間、依然低迷したままだ。
住宅性能表示や長期優良住宅認定、セキュリティや子育てをコンセプトにした街づくりなど様々な工夫を試みてはいるものの、肝心の資産価値向上には至っていない。――何かを見落としている。
近頃は「家を買う」とはあまり言わず、住宅でもなく、住まい、と呼ぶ。いっそのこと企業が生産すべきは、<住まい方>ではないのか。日本人が求めているのはもはや器としての住まいではなく、心を満たす〝何か〟なのだから。
孤独な社会へ
いまや、日本の世帯構成は単独世帯の比率が核家族世帯を上回る。2035年には単独世帯が37%となり、かつて40%以上を占めた「夫婦と子」が暮らす世帯は23%に減少すると予測されている。
全世帯の約4割が「一人暮らし」という社会を想像できるだろうか。価値観の多様化や個人主義を推奨し、家族や地域、更には国のあり方についての議論をないがしろにしてきたツケが孤独な社会の到来なのか。
成熟社会を迎えた今、住宅・不動産業界がなすべきことは何か。プレハブやツーバイフォー、木造など住宅の工法名を冠した業界団体が歴史を重ねる一方で、リノベーション住宅やシェアハウス、サービス付き高齢者向け住宅など「住まい方」に注目した団体も登場してきた。
常に内需の柱と言われてきた住宅を扱う業界だけに、また消費財でも耐久財でもなく、資産を提供する業界だけに、価値が下がらない商品を生み出す責務は大きい。 (本多信博)

















