住宅ストック5000万戸 リフォーム新時代へ(上) 建て替え・リフォーム特集 20兆円市場へ倍増計画 ストックの持続的活用を推進
住宅新報 2013年3月19日 号 14面
住宅リフォーム市場の規模は1996年(平成8年)の約9兆円をピークとして近年は約6兆円でほぼ横ばいです。欧米では一次取得者を中心に中古住宅を取得し、必要に応じてリフォームするというライフスタイルが一般的であるのに対し、わが国はこれまで新築が中心でした。しかしながら中古住宅の流通シェアは、90(平成2)年の5.5%から08(平成20)年は13.5%と上昇しています。今後は次第に中古住宅のウェイトが高まり、リフォーム市場も活発になってくると予想されます。(建築家/佐川 旭)
国土交通省では中古住宅流通・リフォーム市場整備の意義として次の5項目をあげています。
〇無理のない負担でニーズに応じた住まいの確保
中古住宅の流通とリフォームの促進により国民の住宅に関する選択肢を増やし、無理のない負担でニーズに応じた住まいを確保。国民一人一人が豊かさを実感できる住生活を実現する。
〇住み替えによるライフサイクルに応じた住まいの確保
持ち家の高齢単身、夫婦世帯の約6割は100m2以上の広い住宅に居住している。高齢者の所有する広い住宅を、子育て世帯向けの賃貸住宅として活用するなど、ライフサイクルに応じた住まいの確保を実現する。
〇住宅の質の向上、資産価値の維持・増大
適切な維持管理とライフステージに応じたリフォームが行われれば、住宅の質の維持、向上が図られる。さらに良質な中古住宅の資産価値が市場において適正に評価され、流通が促進されるようになれば、住宅の資産価値が維持・増大される。
〇低炭素・循環型の持続可能な社会の実現
断熱改修などのリフォームの促進による住宅ストックの省エネルギー性能の向上を図るとともに、中古住宅流通の促進による住宅ストックの循環利用を図り、低炭素・循環型の持続可能な社会を実現する。
〇住宅投資の活性化による内需拡大
全国に現存する5000万戸を超える住宅ストックについて適切で魅力的なリフォームが行われ、持続的な有効活用が図られることにより、内需の拡大と地域の活性化を実現する。
今後これらの考えのもと積極的な施策の展開を図り、国は国の新成長戦略のひとつとして位置づけ、2020年までに20兆円という市場規模の倍増の目標をかかげています。
重視される耐震と省エネ
現在わが国の住宅ストックは平成20年時点で約5760万戸となり、総世帯数(5000万世帯)を上回り量的充足が進んでいます。
これまで新築住宅が中心となって住宅の取得が行われてきましたが、これからはこうした既存の住宅ストックを最大限活用することが求められる時代に突入したのです。
これらを裏付けるように、今年度の国土交通省の予算案を見ると、住宅、建築物の耐震改修や省エネ推進事業、中古流通・リフォーム促進を重視した編成になっています。具体的な新たな取り組みとしては、生活者へのリフォーム相談の体制整備やリフォーム事業者の情報提供システムの整備、リフォームそのものを担保価値として金融機関などに認めてもらうための調査、研究などが目につきます。
その他税制面では、自己資金によるケースで、工事費の10%を所得税額から控除できる特例措置の、最大控除額引き上げなども実施される方向で、こうしたこともリフォームの後押しとなりそうです。
木造住宅の4割は旧耐震 国も助成、税制で改修を後押し
現在日本には約2450万戸の木造既存住宅があります。その内40%は新耐震基準(昭和56年)以前に建てられており、さらに省エネ基準を満たしていない住宅は約1600万戸にものぼります。
こうした既存不適格住宅の性能を高め、長寿命化を図ることが求められています。性能を高めるには、次の3項目が重要でしょう。
(1)耐震性能
(2)省エネ性能
(3)耐久性向上
これらを踏まえて国土交通省も、性能を高めるため既存住宅の耐震化、省エネ化およびバリアフリー化の取り組みを、助成制度や税制面からも支援し始めました。特に「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部)において「地震発生時の人的、経済的被害の軽減を図るため住宅、建築物の耐震化、省エネ化を推進する」と位置づけられていることを踏まえ、耐震化と省エネ化の一体的な取り組みを進めています。
日本の住まいの平均寿命が短いのは、耐震性や耐久性に対する不安と同時に、設備機器などの不具合や旧式化などの不満によることも原因の一つと思われます。
しかしやはり、住まいの基本をきちんと抑えておく考え方こそが、何よりも重要でしょう。住まいの基本となる構造は次の5項目です。
(1)基礎補強
(2)基礎+土台緊結
(3)柱引き抜きの防止
(4)架構の新設
(5)耐力壁の補強
特に(5)の耐力壁の補強は、他の工事に比べ工事費もそれほどかからず施工も容易ですので、リフォーム時に合わせて工事を行うことをお勧めしておきます。
耐力は重心、剛心の配置
建物には「重心」と「剛心」という二つの中心があります。重心は建物の重さの中心、剛心は強い壁(耐力壁)などに支えられた建物の固さの中心。地震や台風などの強い風にさらされると、建物は剛心を拠点に外力に耐えようとします。
この時耐力壁の配置が偏っていて剛心と重心の位置が大きくズレていると外力がねじれて伝わり、場合によっては建物の倒壊などにつながります。この耐力壁をつくるには一般に筋かいが多く使われますが、近年は構造用合板も使われるようになってきました。筋かいの耐力壁は、筋かい自身とその接合部に大きな力が集中する構造です。
一方で構造用合板の場合は、力の伝達が多数の釘を介して行われているので、力が集中せず分散する構造になります。




















