「置烏(おくう)の愛」 松岡英雄 新住まいのことわざ(101)
住宅新報 2012年1月31日 号 11面
連載: 新住まいの「ことわざ」
烏(カラス)はとても賢い動物で、車に木の実を轢かせて割るところがテレビで放映されたりする。鵠沼海岸にいる烏は、観光客が食べているハンバーガーを一瞬の隙に奪っていく。鳴き声は不吉なものとされ、『家の近くで烏が鳴くと凶報がある』と言われている。どちらかといえば、嫌われ者である。
鴉と表記することもある。大映映画「浅間の鴉」(53年)は長谷川伸の「沓掛時次郎」を原作とする股旅映画である。子供の頃に見た記憶がある。ストーリーはすっかり忘れてしまったが、なぜか、時次郎を演じた長谷川一夫の流し目だけを覚えている。
愛するあまり、その愛する人の家の屋根にとまった烏までも愛するという。あの烏まで愛してしまうところがすごい。愛情の深いたとえである。『愛、屋烏に及ぶ』ともいう。
まさに、人を愛するということはそういうことだったのだ。あの情熱は一体どこから湧いて来たのだろう。嗚呼(ああ)、あの情熱はどこへ行ってしまったのだろう。『一つ屋根の下に住む』とはそういう愛の具現のはずだったのに…。
ところで同じ屋根の上でも『蟇蛙(ひきがえる)を屋根へ上げたよう』『犬の子を屋根に上げたよう』は、恐ろしくて立ちすくんでしまうさまにいう。怖さが伝わってくる。『世の中に怖いものは屋根の漏るのと馬鹿と借金』も言われてみれば怖い。そして、もっと怖いのが『娘三人持つと屋根棟が落ちる』。 (エッセイスト)

















