人気設備ランキングで見る 消費者トレンド最前線――リクルート (8)賃貸住宅編
住宅新報 2011年11月15日 号 15面
空室対策に『入居前セレクト』 収納内部の仕様変更がトップ
毎回、住宅の設備や条件についてさまざまなデータを紹介しているこのコラム。今回は賃貸住宅の「入居前セレクト」について紹介したい。果たして賃貸カスタマーはどのような意識を持っているのだろうか。
まず注目したいのが、築年数に対する意識の変化だ。一昔前まで築年数の古さは、賃貸住宅の集客や契約に至らない大きなネックになっていた。しかし、ここ数年のデータを見ると、築年数の古さを許容する傾向が顕著になっている。リクルートが調査した、SUUMOに掲載された賃貸物件情報への資料請求データを築年数別でみると、築21年以上の資料請求の割合が2007年から2011年の間で東京都は1.3倍に、神奈川県は2倍に、埼玉県・千葉県3倍近くに上昇している。
この理由としては、賃料にシビアになったカスタマーが築年数を妥協していること、若い層を中心に中古(築古)容認層が増えていることが考えられるが、もうひとつリフォーム済み物件の増加もある。建物の築年数が古くても、キレイで便利になった物件であれば気にならないと感じるカスタマーが多いのだろう。
リクルートが、住み替え希望者に行なった調査でもその傾向は出ている。賃貸住宅において、自分でコストを負担してもいいからカスタマイズしたいかという問いに、約90%がそう考えたことがあると答えている。
しかし、物件のどこをカスタマイズするのが効果的なのか悩まれているオーナーの方も少なくないだろう。そこで提案したいのが、築年数の古い物件の価値を大きく高める可能性を秘めた、入居者に変更する部分を選択してもらう方法(入居前セレクト)だ。このサービスも調査で聞いてみたが、90%の方が魅力的と答え、3分の2の方がセレクトがあるなら築年数を妥協しても構わないと答えている。
とはいえ、カスタマイズにはコストの問題がある。効率的に賃貸住宅の価値を高めるためにはどんなものがいいのだろうか。比較的導入コストが低そうなものを中心に解説していきたい。
入居前にリフォーム・カスタマイズしたいランキングの上位から見ていこう。1位は収納内部の仕様変更。IKEAや無印良品に行くと自分仕様に棚板や素材を選べる商品がたくさんあるが、それはニーズが顕在化している証明でもある。収納の仕様を選択制にしたり、可変式にリフォームする、または収納家具を入居の際にプレゼントすれば集客効果を高めることができるだろう。
2位は、壁にフックなどを取り付ける。壁面を有効活用したいというニーズの高さが表れている。これは導入コストが安価で済むだけでなく、フック程度であれば退去後の原状回復費用も軽微だ。もっというと、これだけニーズがあるのだから回復するのではなく、そのままつけておけばよい。築年数別での支持率を見てみると、築5年未満のニーズが比較的高い。築浅物件でも導入を検討してみる価値はあるだろう。
3位は、温水洗浄便座。一度味わったら必需品と感じる人も少なくない設備だ。洋式トイレであれば、取り付けを含めて数万円(器具のみなら2、3万円程度から)で導入できる。
5位は、照明器具。照明ひとつで部屋の印象は大きく変えられる。蛍光灯からスポットライトやダウンライトに変更したいというニーズは高い。最近では、省エネ効果のあるLED照明に付け替えたいという声もあるだろう。
6位は、壁に棚板をつける。2位のフックと同様、棚板を取り付けることによって壁面を有効に活用できる。これは上位項目のなかでも実施率が低いのが特徴。その理由として原状回復の難しさが考えられるが、入居時に一定の条件をつけておけば導入することはできるのではないだろうか。
次に、築年数の古い物件のニーズについても探っていきたい。支持率が高い項目を見ると、温水洗浄便座、浴室暖房乾燥機、追い焚き機能に70%近い支持が集まっている。築年数の古い物件は、主に水まわり設備に抵抗があると考えていいだろう。リフォームでは水まわり設備を重点的に変更することが効果的。ただこれらは入居前セレクトでは工事期間が厳しい。あらかじめ実施しておくほうが賢明かもしれない。
入居前にセレクトメニューを提示するのは、現在の新築分譲マンションでは定番となっている。多少面倒と思われるかも知れないが、築年数の経った物件や、長く空室になっている物件にとっては、入居前セレクトは起死回生の打ち手になる可能性を秘めている。
ただし、賃貸物件の入居前セレクトはまだ一般的な認知度は高くない。導入する際は、パネルや見本を使ってカスタマーにイメージしやすくするなどの工夫が必要だろう。
(リクルートSUUMO編集長 池本洋一)

















