不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く [第114回]
■ 安定性高いリート投資課題はレバレッジコントロール
(田辺)個人投資家の投資促進には、どのような点に留意すべきでしょうか。
(横田氏)短期的なキャピタルゲインを追求する個人投資家がいるのも事実ですが、一方でリートが運用する賃貸用不動産の収益の安定性、分配金の安定性を認識すれば、その特性を理解し、長期的なインカムゲインを投資目的とされる方々も、まだまだ数多くいると思います。従って、そうした投資家を開拓することが必要ですし、そのためには、商品性をきちんと訴求する広報活動をしていくことが求められるのではないでしょうか。
よく、投資指標の一つである分配金利回りを中心に商品性の議論が行われることがあります。賃貸不動産への投資によって生み出されるリートの収益、分配金は基本的には安定していますが、一方で投資口価格は証券市場全体の動きなどの影響を受け、価格変動は避けられません。その結果、投資利回りは環境変化によって大きく変動してしまいます。リート投資の安定性を投資家に理解していただくためには「安定的な分配金」に注目してもらうことも重要です。
(田辺)Jリートの今後の課題をお聞かせ下さい。
(横田氏)まずは、今回の金融危機の教訓を今後の運営に生かしていくことが重要です。世界的な信用不安が起きると、高い借入比率でレバレッジを効かせた運用(借入比率を高くして資本の投資利回りを高めること)を行っていることが致命傷になりかねないことが浮き彫りになったと思います。リートの特徴の一つは安定性ですから、そうしたリスクを踏まえる中で、単に借入比率の高低だけではなく、長短比率、固定変動比率も含めて、いかにしてレバレッジコントロールをしていくかが課題です。東証の規則ではレバレッジを規制していませんが、各リートともレバレッジコントロールには真剣に取り組んでおり、十分教訓を生かした運用を心掛けていると感じています。
また、リートの資金調達方法の多様化も課題の一つです。リートの根拠法が投信法であるため、会社法に基づく株式会社のような多様な資金調達(株主割当増資や新株予約権付社債等)が認められていません。その時々の金融環境にふさわしい資金調達を図るためには、資金調達の手法に関してもある程度の裁量があることが望ましい場合もあります。一方で、本件は法改正が必要ですし、またリートのガバナンスに関する論点もあり、すぐには進むものではないかもしれませんが、個人的にはそろそろ論点整理から一歩進んだ議論をしても良いタイミングのように思います。
更に、リート市場の基盤が整備され、これから一層重要なのがコンプライアンス(法令等順守)です。Jリートは外部運用型(不動産の投資運用及び資金調達を行う投資法人が、スポンサー等が出資する運用会社に運用を一任する形態)であるため、スポンサーと投資家の利益相反問題が潜在的に存在しており、特に海外の投資家の中にはその点を気にしている方もいます。各リートのコンプライアンス態勢は既にかなりの程度まで確立されてはいますが、1社がコンプライアンスで問題を引き起こすと、市場全体の信用を喪失させかねない懸念があり、これまで以上に留意する必要があると思います。
(田辺)日本の不動産投資、都市開発などに国内外の資金を活用する手段として、SPCに加え私募ファンドやJリートなどがありますが、東証で新たに「TOKYOAIM」を創設されたそうですね。
(横田氏)東証はロンドン証券取引所と合弁で、09年6月1日にプロ向け市場として「TOKYOAIM」取引所を創設しました。適格機関投資家(金融機関など)などのプロ投資家のみが参加する上場市場です。期間限定の上場が可能なことや投資対象の証券に流動性を付与できることを勘案すると、不動産ファンドや特定の大規模開発プロジェクトなどに活用する余地が大きいと思いますので、一選択肢として有効に活用していただくとよろしいかと思います。
この記事は、2010.07.13の住宅新報3面に掲載したものです。





















