2023 宅地建物取引士受験セミナー (11)
住宅新報 2023年3月28日 号 5面

【問題2-1】
制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
(1)家庭裁判所は、後見開始の審判の要件(本人が事理弁識能力を欠く常況、一定の者から審判請求がある。)を備えるときでも、諸事情を勘案して、後見開始の審判をしないこともできる。
(2)被保佐人Aが民法602条(短期賃貸者)に定める期間を超える賃貸借(Aの利益を害しないもの)をする場合に、補佐人Bが同意しないときは、家庭裁判所は、Bの同意に代わる許可を与えることができる。
(3)未成年者Cが法定代理人Dの同意を得ないで締結した建物の売買契約について、Cが成年に達した後、相手方が1カ月の期間を定めて追認の有無を催告し、その期間内にCが確答を発しないときは、その契約を取り消したものとみなされる。
(4)未成年者Eが法定代理人の同意を得ないで売買契約を締結した後、成年に達してから目的物を引き渡した場合でも、Eは、当該売買契約を追認したものとはみなされない。
【問題2-2】
A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
(1)Aが心裡留保によって甲土地をBに売却し、その後にBがCに当該土地を転売した場合、BCが共にAが真意ではないことにつき善意・有過失であるときは、Aは、AB間の売買契約の無効をCに対抗できる。
(2)Aが通謀して甲土地をBに仮装譲渡して所有権移転登記をし、Bが善意のCに甲土地を転売した場合、その後にAがDに甲土地を売却したときは、Cは、所有権移転登記を具備しなければ、Dに甲土地の所有権取得を対抗できない。
(3)Bが、甲土地は将来新幹線の開通で値上がりすると誤解してAと売買契約を締結した場合、Bの意思表示は動機の錯誤に基づくものであり、Bがその動機を黙示的に表示していても、錯誤による取消しは主張できない。
(4)Aが甲土地には有毒物質が廃棄されていると第三者にだまされて、格安で甲地をBに売却した場合、Aは、Bが善意であれば、たとえ詐欺の事実を知り得たときでも、詐欺を理由に売買契約を取り消すことができない。
【問題2-3】
Aを本人とするBの代理行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
(1)Aが所有する甲土地を売却する代理権をBに与えていたところ、BがAの代理人として甲土地をB自身に売却した場合、Aが事後に追認しない限り、Bの代理行為の効果がAに帰属することはない。
(2)A(未成年者)が所有する甲土地について、保佐開始の審判を受けているAの父親Bが、Aの法定代理人として甲土地を第三者に売却した場合、保佐人の同意を得ていなかったときでも、Aは、売買契約を取り消すことはできない。
(3)Aの代理人であるBがCを欺罔し、不当な高値でA所有の甲地を購入させた場合、この事情についてAが善意・無過失であるときは、Cは、Bの詐欺を理由に当該契約を取消すことはできない。
(4)Aが所有する甲土地をCに売却する代理権をBに与えていたところ、Bが代金を着服する意図でAの代理人としてCに売却し、このようなBの意図をCが知ることができた場合、Aは、Cの引渡し請求を拒むことができる。
【問題2-4】
Aが所有する甲土地をBに譲渡した場合における不動産物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
(1)Aは、甲土地の譲渡に伴い、登記もBに移転したが、Bの詐欺を理由に当該譲渡を取り消した。その後、Bがその一連の事情について善意のCに、当該土地を譲渡した場合、Aは、自己名義の登記を回復すれば、Cに対して、当該土地の所有権を主張できる。
(2)Aから甲土地の譲渡を受けたBは、さらに当該土地をCに譲渡したが、その後、AがAB間の譲渡を解除した場合、当該土地の所有権移転登記を経ていないCは、Aに対して所有権取得を対抗できない。
(3)Aから甲土地の譲渡を受けたが、未だ所有権移転登記を得ていないBは、正当な権限なく当該土地を占有しているCに対して、この土地の所有権を主張し、明渡しを請求できない。
(4)Aは、甲土地をBに譲渡したが、その登記未了の間に、当該土地をCにも譲渡し、Cは、さらにDに譲渡し、現在の登記名義はDである。Cが背信的悪意者であっても、DがBとの関係で背信的悪意者でなければ、DはBに当該土地の所有権を対抗できる。
【問題2-5】
抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはいくつあるか。
ア抵当不動産の焼失による火災保険金請求権は保険料の対価であり、被保険建物の価値が変形した物とはいえないので、物上代位の目的にならない。
イ抵当権は抵当権設定者に目的物の使用・収益を許すものであるから、収益たる賃料債権や転貸賃料債権には物上代位できない。
ウ第三者が抵当不動産を不法に占拠することにより 抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態にあるときでも、抵当権者は、抵当権に基づく妨害排除請求としての不法占拠の排除を求めることはできない。
(1)一つ (2)二つ (3)三つ (4)なし
【問題2-1】 正 解 (2)
(1)は誤り。
条文上は「できる」とあるが、要件(精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況で、一定の者から後見開始の審判の請求があった)が備わった場合、家庭裁判所は、本人保護のため審判をしなければならない。民法7条、大判大11.8.4参照。
(2)は正しく、正解。
保佐人の同意が必要な行為(本肢は該当)について、被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず保佐人が同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。同法13条3項。
(3)は誤り。
制限行為能力者Cの相手方は、Cが行為能力者となった後、Cに一カ月以上の期間を定めて、法律行為を追認するか否か確答すべき旨の催告ができる。Cがその期間内に確答を発しないときは、追認したものとみなす。同法20条1項。
(4)は誤り。
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について全部又は一部の履行があったときは、追認をしたものとみなす。同法125条1号。目的物の引渡しは、その履行に当たる。
【問題2-2】 正 解 (2)
(1)は誤り。
心裡留保による意思表示は原則有効であるが、相手方(B)が表意者(A)の真意ではないことにつき悪意又は有過失の場合は無効となる(同法93条1項)。
ただし、第三者(C)は善意であれば保護され、無過失は要求されない(同条2項、大判昭12.8.10参照)。Aは善意のCに無効を主張できない。
(2)は正しく、正解。
Cは、民法94条2項の第三者であるから、AB間の売買契約は善意のCとの関係では有効とみなされ、Cは所有権を取得できる。また、Aは、それ以外の関係では所有権者であり、Bの登記は無効であるから、Dも所有権を取得できる。したがって、CD間は対抗関係に立ち、先に登記を備えた者が優先する。最判昭42.10.31。
(3)は誤り。
法律行為を基礎とした事情について表意者の認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤)では、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、取消しできる(同法95条2項)。この表示には、黙示による表示も含まれる。最判平元.9.14。
(4)は誤り。
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。同法96条2項。
【問題2-3】 正 解 (4)
(1)は誤り。
Bの行為は禁止されている自己契約に当たり、無権代理として無効である(同法108条1項)が、本人が追認すれば有効となる(同法116条)。また、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、例外的に許される。同条ただし書。
(2)は誤り。
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は取り消すことができる(同法102条)。
(3)は誤り。
相手方は、本人が善意・無過失であっても取消しできる(同法96条1項、大判昭7.3.5)。代理の効果は本人に帰属するので、第三者の詐欺ではなく、本人の詐欺と同視できるからである。
(4)は正しく、正解。
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は無権代理となり、本人に効果は帰属しない(同法107条)。
【問題2-4】 正 解 (3)
(1)は正しい。
取消しによる遡及効は擬制されたもので、物件変動の事実は存在する。したがって、本肢はBからAとCに二重に譲渡されたのと同様に考え、AC間の対抗問題(民法177条)として処理する(大判昭17.9.30)。Aは登記を回復しており、Cに優先する。
(2)は正しい。
解除において保護される「第三者」とは、解除された契約から生じた法律効果を基礎に、解除までに新たな権利を取得した者(解除前の第三者)で、対抗要件を備えていることを要する(同法545条1項、最判昭33.6.14)。
(3)は誤りで、正解。
何の権限もなく甲土地を占有するCは「不法占拠者」であり、登記の欠缺を主張する正当な利益を有しないので、法177条の第三者に当たらない。最判昭25.12.19。
(4)は正しい。
背信的悪意者からの転得者(D)でも、第一買主(B)との関係で背信的悪意者と評価されない限り、法177条の第三者として保護される(最判平8.10.29)。
【問題2-5】 正 解 (4)
アは誤り。
設定者が保険を付したのは、抵当目的物の担保価値を維持するためであるから、保険金は抵当目的物の価値代表物であり、物上代位の目的となる。民法372条、大判大12.4.7。
イは誤り。
法は、払渡しの前に差し押さえることを条件として賃料等の法定果実に抵当権の効力が及ぶことを認めている(物上代位、同法372条、304条)。ただし、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除いて、転貸賃料債権への物上代位は認められない。最判平12.4.14。
ウは誤り。
本肢のような状態にある場合、抵当権者には所有者の妨害排除請求権の代位行使、その場合の直接自己への明渡請求が認められるほか、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることもできる。最判平11.11.24。
ア、イ、ウすべて誤りであり、正解は(4)である。
























