鑑定士協連レター 17年地価公示が示すもの 土地需要、経済合理性軸に
住宅新報 2017年4月18日 号 4面
連載: 不動産鑑定士レター
実態はまだら模様
今年の地価公示結果は、数年来の需給動向の延長線上にあることを示す結果となりました。東京や大阪の都心など特殊な上昇を示す地点はあるが、全国を一括りにすれば極めて堅調な推移であることが示されました。しかし、地方圏に目を向ければ、実態はまだら模様で、インバウンド効果や五輪、リニア新幹線などあらゆる意味で高い求心力を示す三大都市圏と、これに次ぐ札幌、仙台、広島、福岡圏と概ね人口百万人以上の主要な都市圏の優位性が際立ち、それ以外の地域との格差が拡大し、さらに各々の圏域内部でも県庁所在地や人口概ね十万人規模以上の都市とその他の市、町村~村落部間にも優位性格差があり、少し細かく見ると、場合によってはその格差が拡大しつつある―という傾向です。
こうした分析やトピックスは他メディアにお任せすることとし、本レターでは国富の50%を占める土地価格について、そのあり様と価格体系にまつわる、より基本的で、基礎的な事象について考察してみたいと思います。
そもそも土地に価格が生じたのは、人間社会が一定の発展と成熟を遂げて社会制度と経済が発達して貨幣経済社会が成立し、土地が経済財として市場取引の対象となることによって経済価値が生じたからで、他の財とかわりません。しかし、土地は持ち運びが出来ず、人間が土地のところに行って利用するしかないため、地域というものに縛り付けられるという、経済財としては極めて特殊な性格を有しています。これが、同じ土地でありながら、土地価格に一山百円から一坪1億5千万円という天文学的な価格差が生じるゆえんです。
キャラメルは北海道でも九州でも、東京、大阪でも大差の無い価格で売られているのですから、不動産価格の特殊性は明らかです。
市場は戦後の経済復興と人口増を背景として戦後60年にわたって右肩上がりに価格上昇を続け、ついにバイイングクライマックスを迎えてバブルが発生し、91年に至ってこれが弾け、土地神話が崩壊して20年間のデフレを経て現在に至っています。
この間、富と人口の流入が続いて土地価格が上昇を続ける主要都市では、建物の集積が進み土地利用が高度化し、不動産の収益力が高まってさらに土地価格が上昇する、サイクルが繰り返されました。また、これら都市の郊外部では、人口増と経済発展が同時進行した経済の高度成長を背景として、未利用の山林原野などの広大地を開発して新たな町が造られ、そこに役所、学校、商店、病院等あらゆる生活利便施設が経済原則に基づいて進出し発展してきたのです。これに対して、人口減とデフレ経済が同時進行する現在、銀座、道頓堀などの一部の特殊な地域、物流拠点などの一部の分野を除いて、フロンティアを失いつつあります。
人々の需要は、既存の高い利便性、経済性を有する地域に向かっています。かつての一律の膨張的な発展は失われ、三大都市圏でも地方中核都市圏でも、衰退を続けるその他の圏域も含めて、あらゆる圏域でこの現象は起こっています。
少子高齢化 人口減映す
三大都市圏は、この国の基本構造としては圧倒的な地位を保っているものの、その内部では、利便性選好性を中心とする需要構造の変化が起きているのです。
首都圏(都心通勤可能エリア)でありながら、千葉県縁辺部、神奈川県の相模川以西、埼玉県の縁辺部等々の地価動向に脆弱性が見られるのがその例といえます。
人口減と少子高齢化の衝撃は既に始まっています。今回の地価公示結果はそのことを示しています。
つまり、高度成長からバブル期とその崩壊とそれに続くデフレ期を経た現在、土地需要においては、膨張的~拡張的な発展傾向は失われ、経済合理性や利便性選好性を基軸に据えた需要構造に変化した、と評価すべき段階に至ったと言えます。
(地価調査委員会委員長、小泉寛)





















