鑑定士協連レター 福岡県粕屋町 人口増加率日本一に 県民もびっくり
住宅新報 2016年1月19日 号 4面
連載: 不動産鑑定士レター
目立たない町
粕屋町。福岡県内でもあまり目立たない町で、福岡都市圏以外の人はご存じないと思います。県外の方は全く知らなくとも当たり前の町が14年9月の新聞で『日本一(人口増加率)』と報じられました。人口約4.4万人、面積約14平方キロメートルの小さな町がです。
新聞報道では、「国立社会保障・人口問題研究所」の発表によると、10年を標準とした人口増加率は、30年1.23倍、35年1.26、40年1.30と、25年以上にわたって増加を継続します。2位は港北ニュータウンで有名な横浜市都筑区ですが、人口増加率は30年1.20倍、35年1.23、40年1.25と、25年後の増加率ではぶっちぎりです。まあ、都筑区は20万人を超えており人口規模が比較にならないほど大きいので人口増加数は都筑区が日本一ですが、増加率自体は福岡県の小さな町である粕屋町が全国一なのです。
福岡県民は大げさかもしれませんが、少なくとも、私はびっくりしました。やや雑然とした感があり、田園も多く残る小さな町なのです。
粕屋町の沿革
昭和30年代ごろまでは炭鉱と農業の町であり、昭和50年代に入ってからは福岡市のベッドタウンとして開発が進み人口が急増しました。即ち、「伊藤伝衛門」の飯塚の炭鉱や三井三池炭鉱のような大規模炭鉱ではないですが、福岡県内ではよくある旧産炭地なのです。糟屋炭田の一角を占め、かつての石炭産業が衰退し、跡地は工場団地となっています。町の産業は、昔は米作中心の農業が主要産業でしたが、花卉やブロッコリーなどの都市近郊農業も行われています。また、近年では、福岡市や福岡インターに隣接していることから、流通業務関連の開発が進みました。即ち、人口減少率の上位に位置する大牟田や飯塚市と大差ないような小さな町なのです。
増加率1位の理由
このような粕屋町が、なぜ、日本一の増加率予想となるのか、不動産鑑定士の立場から検討してみます。
(1)理由1~都心への距離
博多駅にほど近い『中州』でお酒をたしなみ、タクシーで帰宅するとします。中洲地区から、粕屋町の柚須駅は、福岡市で最も人気が高い大濠公園地区と、役場周辺は福岡市内で3本の指に入る人気住宅地である西新地区とほぼ同じ立地条件を有するのです。地価公示によると、大濠公園の住宅地は坪(3.3m2)200万円、西新地区の住宅地は同100万円の高級住宅地です。JRでは更に近く、博多駅から柚須駅まで6~7分、役場の最寄り駅である長者原駅まで10~13分です。
(2)理由2~道路施設、利便施設
九州自動車道福岡インターチェンジは、粕屋町と隣接しており、福岡空港も約1~2キロ、映画館も併設する大規模商業施設であるイオンモール福岡が町内にあります。
(3)農地・空き地の点在と見直された交通接近条件
粕屋町は旧産炭地であったため、従来は住宅としての人気度が低かったのは否めません。大規模開発が可能な丘陵地が少なかったため大規模住宅団地は少なく、やや雑然とした感がある町で、農地や未利用地が多く残存する町でした。それが、リーマンショック後の景気と地価回復に伴う住宅地需要の盛り上がりで、粕屋町の良好な交通接近条件が見直されました。
区画整理地や中規模開発団地は福岡市内より高額な価格帯の分譲が行われています。幅員が広く駅徒歩圏の広大地はマンションの建設がみられ、駅徒歩圏でなくとも、農地は各所でミニ開発の住宅が見られます。東京などでも大学の都心回帰、マンションの都心回帰が進み、日本全国で交通施設などへの接近性が価格形成要因として、大きな比重を占めるようになってきています。粕屋町もそうした状況を反映して、日本一の人口増加率と予測されているものと思われます。
(福岡県不動産鑑定士協会、岩隈良弘)





















