民法改正のポイント ――早い情報が実務で生きる 渡邉不動産取引法実務研究所 代表渡邉秀男【6】 債権編(2) 手付け・相手方の履行の着手を規定化
住宅新報 2015年5月12日 号 2面
連載: 民法改正のポイント
Q これからは、宅建業者本題の「売買契約」や「賃貸借契約」に直結する改正内容を知りたいのですが。
A まず売買契約から入るとして、民法557条の「手付」に関する規定の改正の話をしたいと思います。まず第1点は手付解除ができない場合というのは、「相手方」が履行に着手している場合であって、自分が履行に着手していても手付解除はできるということ、第2点は売主による「手付倍返し」による契約解除の場合は、売主が買主に対し実際にその手付金の倍額を提供すること、すなわち買主のところに持参することが必要であって、単に「手付倍返しによって契約を解除する」という意思表示をいくら内容証明郵便で行っても、その契約解除の効力は生じないという改正です。これらは、いずれも最高裁の判例に基づいて改正されるわけですが、大事なことは、この手付解除(解約手付)に関する557条の規定というのは、もともと「任意規定」ですから、当事者がこの改正された内容の規定と異なる内容の特約をしても法的には何ら問題はない、すなわちその異なる内容の特約がそのまま効力を生じるということなのです。
Q ということは、この「解約手付」の内容を契約書に定めなくてもよいともいえますよね。
A 定めなくてもよいのです。しかし、その内容を契約書に定めておかないと、契約締結後に「手付解除をしたい」という問題が生じたときに、契約は一体どうなるのかという新たな問題が生じ、そうなると、その取り扱いは「民法の規定が適用される」、すなわち「民法の規定どおり手付解除ができる」ということになってしまうのです。つまり、民法は当事者が何らの定めをしない場合に、その当事者の意思を補完する機能をもっているのです。したがって、当事者が本当に「手付解除をお互いに認めない」「手付解除をしない」というようにしたいのであれば、契約書に「売主および買主は、この契約においては民法557条の規定は適用しない」とか、「お互いに手付解除はしない」といった明確な否定文言を定めておかないと、民法の規定が適用されてしまうのです。
Q そうなると、例えば宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主になる売買契約において、売主である宅建業者が手付を受領した場合に、その手付の性質について何も定めなかったときにも民法が適用されるのでしょうか。
A そうではありません。そのような取引の場合には民法の特別法である宅建業法が優先的に適用されますので、何の定めもしなかった場合には宅建業法39条の規定に基づいてその手付は自動的に「解約手付」とされ、また定めをする場合には「解約手付」としなくてはならないことになっています。これが「強行法規」たる宅建業法の機能といえます。
























