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プレミアム会員限定よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第184回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く 総集編 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之氏

住宅新報 2011年12月20日 号 3面

連載: よく分かる不動産証券化とビジネス活用

マンション・開発・経営

新ステージは『BIGウェイヴ』 「不動産と金融の融合」が進化

 読者の皆様のご支持に支えられ、お陰様で本シリーズも約3年間に及ぶ連載となりました。この間、不動産投資・証券化市場は世界的な金融危機と回復、その後の欧州財政不安などの大きな環境変化を経験しました。こうした変化に対応し、市場ではJリート(不動産投資信託)の合併などの市場再編成、セーフティネット(安全網)の構築が図られるとともに、リスクマネジメントやコンプライアンスの重要性についても再認識されることとなりました。「有識者に聞く」でも指摘があったように、市場も関連プレーヤーも、こうした経験から多くのことを学びました。世界経済の先行きに不透明感が残りますが、市場は金融危機を経て、新たなステージを迎えつつあります。そこで、今回と次回の2回にわたり、少しずつ見えてきた新たなステージにおける不動産投資・証券化市場の潮流について整理していきたいと思います。

 筆者は、2002年に出版した「不動産投資のイノベーション」(ダイヤモンド社)の中で、その後に起きる市場の変革を予想しましたが、結果的にその多くが現実のものとなりました。しかし、当時は欧米の不動産投資先進国に比べて日本が大きく遅れていたため、欧米市場の歴史を調べ、その中で日本に取り入れることが可能なものを抽出すれば、誰もがある程度まで将来の姿を予想することができたのも事実です。ところが、金融危機以降は、世界の枠組み、金融のあり方そのものが大きく変化しようとしており、何かモデルや指標に頼るわけにはいきません。従って、ここでは将来を予想するというよりも、現在、既に起きていることの中から、今後も続くだろうと考えられる事象を抽出して整理していくことにします(P・F・ドラッカーの言う社会生態学的アプローチ)。

 新たなステージの大きな方向性は、投資対象、資金調達、市場参加者などにおけるボーダーレス化(Borderless)、不動産と金融の融合(Integration)の進化、そしてグローバル化(Globalization)の3つが考えられます。それぞれの頭文字を取ると、BIGとなります。ここではBIGウェイブ(Wave、波)と呼ぶことにします。サーフィンを思い浮かべていただくとわかるように、BIGウェイブはその波に乗ることができれば大きなチャンスとなりますが、波に乗れなければ転倒してしまうリスクをはらんでいます。すなわち、新たなステージではこれまで以上にビジネスチャンスが広がるものの、グローバルな都市間競争やプレーヤーの競争がいっそう激しくなるということです。

 「不動産と金融の融合(Integration)の進化」というのは、これまでに進んできた「不動産と金融の融合」がさらに進展するだけでなく、不動産と金融の融合のあり方が、色々な意味で「進化」するということです。「不動産と金融の融合」が進むことによって、それまで預貯金などに向かっていた個人や法人の運用資産が、新たな投資資金として不動産市場に流入するようになりました。

 これは同時に、不動産市場が金融市場の変動の影響をこれまで以上に受けるようになることを意味します。もともと不動産市場動向は、銀行貸出(間接金融市場)の動きと深い関係があります。多くの不動産会社が、自己資金だけでなく借入金も利用して不動産を購入していることから、このことは容易に想像がつきます。しかし、投資家から「不動産証券化商品」を通じて資金調達することによって、株式や債券などの証券市場(直接金融市場)との関係が、これまでとは比較にならないくらい強いものとなりました。

 そもそも、株式や債券などは、不動産に比べて激しい値動きをします。そのうえ、直接金融市場における投資家の行動は、ますます短期利益を追求する傾向にあります。このことは、中長期的に投資すれば安定的な収益を生み出すことが期待できる不動産投資の特性とは、必ずしも調和しません。 (つづく)

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