よく分かる不動産証券化とビジネス活用<第182回> 不動産証券化の現状と将来展望 有識者に聞く 総集編 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之氏
住宅新報 2011年12月6日 号 3面
インフラ整備に民間資金 権限委譲とリスク移転も
今回は「有識者に聞く」から、世界最大規模のインフラファンドを運用する投資銀行で活躍し、現在もインフラ(道路、上下水道、ゴミ処理施設などの社会資本)の運営に携わっている方の言葉を紹介します。それは「民間資金導入は目的ではなく手段である。目的を達成するために、手段をどのように生かしていくかということこそが問われなければならない」というものです。
国や自治体の財政赤字、過剰債務は大きな問題ですが、今後ともインフラの維持改修投資を続けていく必要があります。新規のインフラ投資が必要となる場合もあるでしょう。この言葉は、「だから民間資金を導入すべきだ」と安易に主張する一部の論調に、問題意識を投げかけるものとなっています。官の仕事では(民間でもありますが)、何かの課題を解決するときに、「課題対応のために、このような組織を立ち上げ、予算を付けました。予算も予定通り執行しました」で、終ってしまうケースがあるようです。民間資金の導入も、形式だけでは意味がなくなってしまいます。問われるべきは「成果」なのです。成果を出すために、どのような組織立てで、どのように民間資金を活用したら最も有効に機能するのかを考えなくてはなりません。
そのためには、民間資金を導入することによって、何をしたいのかを、改めて整理する必要があります。よく言われるのが、民間資金導入により、中長期的な財政資金(国、自治体)の不足を補てんするということです。これは重要な視点です。しかし、少なくとも現段階では、国や自治体は国債や地方債を発行することによって、極めて低い金利でお金を借りることができます。民間が資金調達すれば、年2~3%の金利負担が必要なプロジェクトでも、国の信用の裏付けがある国債であれば、金利1%で10年間も資金調達できます。その意味では、民間資金を導入しないほうがよいともいえます。もちろん、国や自治体の借入金が増え続けていくと、あるときから金利が急上昇するので、低金利での調達が永遠に続くことにはなりません。しかし、いずれにせよ、財政補填という目的は、国や自治体がインフラ整備資金を量的に確保したいという一方的なもので、これだけで民間資金を有効に活用できることにはなりません。
それでは、これ以外の民間資金導入の目的にはどのようなものがあるのでしょうか。「有識者に聞く」で語られたのは、次のようなものです。
1つ目は、事業リスクを民間に移転することです。インフラを運営するときの収入減少、運営コストオーバーラン、金利変動などのリスクなどを、民間に移転し、民間に事業責任を負わせることです。しかし、民間にリスクを移転するからには、最低限の権限だけを官に残して、それ以外の権限を民間に移さなくてはなりません。そこがあやふやでは、民間もリスクを取れなくなってしまいます。
2つ目は、民間の事業選択のフィルタリング(選別)機能を活用することです。民間企業が投資するのは、一定の収益性が見込める事業に限られるからです。ただし、民間資金導入のために事業性を向上させようとすると、たとえば高速道路料金の値上げなどの受益者負担(高速道路利用者が負担)が発生するかもしれません。それを官が補填するのか、受益者負担を認めるのか、ある程度までは想定しておくことが必要です。
3つ目は、民間による事業運営のモニタリング(監視)機能、民間の経営ノウハウを活用することです。事業がうまくいかないときには、民間に蓄積された知恵、ノウハウを活用して事業を立て直そうとするでしょう。
改正PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が本年6月に公布され、公的な施設の「運営権」の民間への譲渡が可能になるなど、インフラ整備への民間資金導入の道具立てが整備されつつあります。これらがうまく機能するか否かは、こうした発想に基づいて事業が運営されるか否かにかかっているのではないでしょうか。 (つづく)





















