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プレミアム会員限定ある老婦人の寂しいお話「実害なくも同情もせず」

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 当社の空室募集に、ある老婦人から申し込みが入った。物件は事務所使用可の2DKの部屋で、申し込みに来店した時、取ったばかりの会社謄本も持参していた。本人の話と謄本の内容から、奥多摩街道沿いで中古車販売をしているようで、社長だったご主人が数年前に他界している。事務所を店から離して兼用住居として使いたいとのこと。

【食わせ者】
 第一印象は羽振りも良く、身なりもきちんとしていたが、その老婦人、実は「とんでもない食わせ者」であった。

 家主さんの審査も通ったが、2週間後の契約期日の直前に電話が入り、「お客様の依頼で、急拠、明日からドイツまでベンツの中古車の出物を探しに行くことになった。ついでに5台くらい買い付けてくるつもりなので、契約は延期してもらえないか」とのこと。

 仕方なく1週間ほど待つことにしたものの、何か変、と感じたので、その間に謄本にあった所在地に行ってみると、建物はあるが会社はない。近所で聞き込みをすると「中古車屋さんがあったのは10年位前までですよ」との話。

 謄本の発効日は数日前だったのだが、とっくに会社を畳んでいるのに謄本上はそのままにしてあるようだ。

 もののついでに申込書に記入されている現住所を訪ねてみると、そこに住んでいたのは3年前まで。該当する貸家の隣の住人に話を聞くと、「あなた、あの女の知り合い? あのババア、近所からカネを借りまくって夜逃げしちゃったんだよ。今、どこに住んでんの? 会ったら殺したいと思ってる奴はいっぱいいるよ」と物騒なことを言う。

【出資話?】
 会社に戻ると、夕方、コインパーキングの会社の部長という人から、「○○さんという人、ご存知じゃないですか?」との電話が入った。なんでも「ドイツで車を仕入れる資金を貸してほしい。商談が成立したら十分な謝礼をするから」と頼まれて300万円ほど用立てたが、後は音信不通だとか。不動産屋も出してくれた、と当社のことを聞かされていたようだ。私に出資話を持ちかけなかったのは、最初から「カネはない」と判断されていたからで、ドイツにも行っていないに違いない。私に実害はなかったし、同情はしないが、寂しい老後である。
 (坂口有吉不動産・社長)

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