賃貸仲介手数料0の時代へ
連載: 2013年 資産運用ビジネス特集

オーナーズエージェント株式会社
株式会社アートアベニュー
代表取締役 藤澤雅義
その問いは、今あなたが住んでいる物件は「①ネットで探した物件か」、「②ネットで探した物件の不動産屋さんの他の物件で決めたものか」、「③は①や②以外」、というものなのだが、なんと①が4割、②が3割だというのだ。入居者の4割は、「PCやスマホで自分で探し出した物件にそのまま住んでいる」という。以前は、部屋探しは、必ず地元の不動産屋さんに行って営業担当の方に自分の希望条件を述べ、良い物件を見繕ってもらって、それから案内をしてもらい、その中から決めるというものだった。しかし、今や、ネット上で物件を十分に個人が吟味し、これはと思う物件に絞り、あとはその物件を見せてもらって、ネットの情報の通かどうかを「確認」してその物件に決める、という手順となった。技術革新のおかげで仲介業のあり方が根本的に変わったといえる。

表1:部屋探しとネットの利用状況(全体/単一回答)
ネットの普及で変わる仲介
今は4割だが、この割合は、ネット上の情報の充実、つまり写真点数の多さ、動画の多用、詳細な物件情報、周辺情報の充実等を図ることによって、ますます増えることだろう。そして、ネット上で「自分で探した」つもりの入居者がはたして家賃6万円だからといって、仲介手数料6万円を払うだろうか?「鍵を開けただけ」の人に。入居者からしてみたら、不動産屋の店舗にわざわざ行く必要はないし、現地集合で十分、物件を「確認」だけさせてくれ、というところだろう。案内中も特に話かけないでくれ、情報はネットで既に把握している。もちろん、現時点でまったく営業担当に会わないで決めることはほとんどの人ができないだろう。最後には「担当」に会って口頭で確認をしたい部分はある。しかし、それはあくまで「確認」なのだ。
そもそも部屋を借りるのに、なぜ手数料が別途いるのか?という根源的な問いもある。現在は、「広告料」という名の手数料をオーナーが不動産屋さんに払うことが当たり前になっているが、技術革新によって、「仲介の手間」は減っているのに、入居者から家賃の1ヶ月分、オーナー側からも1ヶ月で、計2ヶ月の手数料を得られるのはちょっとバブルではないだろうか?時代を読む業者は「仲介手数料無料」のメッセージを発し始めている。
仲介手数料で食べていけなくなる

表2:ネットで入居者が自分で探す時代に
このような状況のなかでは仲介業者は淘汰されていることだろう(表2)。オーナーから手数料がもらえたり、また管理会社側からバックフィーがもらえる体制を作っているところはいいだろうが、そうでないところは、これまでのように仲介手数料で食っていけなくなる。また、管理会社はオーナーからフィーをもらえているのが、「管理会社」なのだから(「無償管理」は論外)、入居者から仲介手数料をもらう必要はない。今後は「仲介手数料無料」を堂々と謳う管理会社が多く出現することだろう。管理会社もネットで入居者が自分で選んでくれて、「楽な仲介」になるのだから仲介手数料をもらわなくても採算が合う。それどころか、今までは仲介業者に決めてもらった場合に、自分の利益の中から仲介業者にバックフィーを払ったりしていたのだから、それが無くなるだけでも儲けものだ。よって、管理会社が仲介業者に決めてもらうより自社で仲介するという体制に移管するはずだ。
自社決め率を意識する時代に
「自社決め率」(表3)を意識する時代にはいったのだ。「自社決め率」とは、「自社管理物件の契約件数」に対する「自社店舗による仲介件数」の割合だ。管理物件が多くなれば、必然的に自社の店舗だけではなかなか決めきれず、他業者に仲介を依存するようになってしまうが、しかし、なるべく「自社で決める」という体制を維持したいものだ。それが、昨今のネット革命が後押ししてくれるのではないか。何も「店舗」がなくとも仲介はできる。

表3:「管理物件の自社決め率」と「管理物件仲介率」の計算
表4の「パターン別管理会社の体制」のパターン④は、「分裂型」である。これは、仲介店舗において他者管理物件の仲介はしっかりやっていて、力があるのに、自社管理物件を決めていないということである。これでは、「仲介会社」と「管理会社」がまるで別の会社のように勝手にやっているということになる。意外にこういう会社は多く存在する。

表4:パターン別管理会社の体制
管理重視への転換
これらの時代の変化によって、今後「仲介が変わる」ことになるだろう。もう今後「路面店舗」は特に必要ないだろう。営業マンは店長一人でいいのでは。無人店舗がもっとあってもいい。PC上で「TV電話でバーチャル接客」というのも有りだ。
そして、また管理会社なら自分の物件のみを、もしくは重点的に募集できる。自社の物件だから情報も豊富にあるし、単なる仲介の立場だと毎回募集物件の情報が変わる(他者物件中心だから)ので、それほど情報集めに時間を割けない。そろそろ、「仲介」重視なのか、「管理」重視なのか、自社のビジネスモデルをはっきりさせる時が来ているのではないか。結論は決まってはいるが。
ただ、「仲介」と「管理」では、スタッフの体質も違う。この転換をするのは意外に難しい。給与制度も含めて、経営トップが強いメッセージを発しなければ変えることは難しいだろう。
何店舗も出店していて、傍からは立派な「仲介業者」に見えている会社が、実は、「自社決め率」が高く、「他者物件仲介を禁じて」いたり、「抑制」していたりする。それは、「賃貸仲介手数料で売り上げを上げようとしている仲介店舗」ではなく、「自社管理物件を決めるために存在している仲介店舗」という位置付けなのだ。これは、まどうことなき「賃貸管理会社」である。
求められる「空室対策提案」
さて、では「自社で決める管理会社」になるためには、とても重要なことがある。それは、「決まる良い物件を管理しているか」、ということである(表2)。いくら管理物件が多くとも、入居者に人気のない物件ばかりであれば意味がない。ネット上で選んでもらえるには、「真の実力」がなければいけないのだ。これからは、ネットではっきりと物件の優劣がわかってしまうようになるのだ。よって、オーナーに対して具体的な「空室対策提案」をする必要がある。その「提案」を積極的にできる体制が管理会社にあるかどうかということが問題になってくる。はたして、現在の管理会社の中で、「空室対策提案力」があると自信を持っていえる会社がどれだけあるだろうか。管理会社は、とても多岐に渡る業務を行っている。よって、「空室対策提案」にまで手が回らないというのが本音ではないか。
表5は「管理会社の基幹業務と組織体系」だ。表にあるように、管理会社の業務は大きく分けて4つある。①管理受託営業、②リーシング、③現場管理、④出納、である。それぞれが、単独で一つの会社を経営できるくらい重い業務が4つある。

表5:管理会社の基幹業務と組織体系
外部委託してでも磨くべきモノ
賃貸管理ビジネスというものが、始まったのはいつ頃だろうか。昭和50年くらいからだと思うが、そうすると大体40年くらい経ったということになる。近い将来、「賃貸住宅管理業法」ができると噂されているが、確かに「賃貸管理業」は「宅地建物取引業法」の範疇ではけしてないと思う。管理業に「仲介」は当然含まれているのだが、はっきりいってもっと総合的で「大きな」ものである。
結論から言って、私の四半世紀を超える業界経験から、また実際に管理会社を設立し経営してきた18年のキャリアから言わせていただくと、これらの業務を皆自社スタッフで「内製化」することは、「不可能」である。不動産会社の方は、建設会社の方などと比べて、フィーを払って他者に業務をアウトソーシングすることに慣れていない。せっかく入った売り上げの中から、他者に支払いをすることがもったいないのだろうか。しかし、それは間違っている、コストの高い「社員」という肩書きの人に、比較的容易にできる「鍵交換」や「入居者からの電話受付」、「単純な契約書作成業務」等々をやらせるほうが間違っているのだ。それらの業務は他者にフィーを払ってでもアウトソーシングし、もっと大事な、つまり、「空室対策提案」等をオーナーに行うということをすべきである。
選択と集中
この話をするときに私がいつも例に上げる逸話がある。住宅新報社から昨年出版していただいた「賃貸経営マイスター」という本があるが、その最終原稿を急いで虎ノ門にある住宅新報社に届けて、ゲラを持って帰るという仕事を、ある社員に私は命じた。そして、そのとき「バイク便」に頼んでいいよ、と付け加えたのだ。すると彼女は「往復で4000円かかり、もったいないので、私が行ってきます」と言った。コスト管理意識もあり、自己犠牲的精神もあり、なかなか良い発言であった。しかし、私はこう答えた。「行って少々待たされて、帰ってくるまで大体1時間半だよね。あなたは1時間半で4000円稼げないの?稼げないと思うのなら、行ったらいいよ」と。彼女はすかさず「バイク便に頼みます」と言った。自分で行くようであれば、彼女は弊社にもう在籍ていないだろう(笑)。4000円がもったいないのではなく、優秀でかつコストの高い社員の「時間」がもったいないのである。
これは所謂「選択と集中」である。コアコンピタンス(得意かつ重要な分野)を明確にし、それに経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を集中させるのだ。管理会社にとって重要な分野はほぼ決まっていると言っていいだろう。それは、「空室対策」と「管理受注」のふたつだ。ここに注力をすべきではないか。
労働生産性を上げて「儲かる商売を」

真のプロパティマネジメントを実現するためには、「社員でなければいけない仕事」と、「社員でなくても良い仕事」を明確にする必要がある。もう一度いうが、すべてを社員でやることは不可能だ。管理会社はあまりに、業務の範囲が広すぎてマネジメント仕切れない。実際、現在弊社は全国で100社あまりの業務カイゼン支援をしており、今までいろいろな管理会社を見て来たが、管理戸数が多いからと言って、中身がしっかりしているかというと残念ながらそうでもない。得意な分野があれば、不得意な分野もあり、経営者は悩んでおられる。業務フローを変えても変えても問題が降ってくる。それは、そもそも無理なことをしているのだ。
そして、管理会社の経営者は「一人あたりの労働生産性を高める」ということを強く意識すべきだ。「社員」はもっと利益を上げなくてはいけない。実は、管理会社は安定しているだけでなく、「儲かる商売」だと私は思っている。





















