タダで命を懸けるのは?
■危険手当はたったの2万円
数年前、途中から当社の管理物件となった貸家がある。それまでは特定の不動産会社に管理を依頼することもなく家主さんが自分で契約まで取り行っていたし、更新契約などもせず自動更新にしていたが、大工さんの紹介で当社が管理をさせてもらうことになった。
と言うのも、新築の時から20年以上も入っている入居者が家賃を滞納し始めたことで悩んでしまったようだ。しかも当初は一応、法人契約だったが、会社が解散し、契約を個人名義に書き換える必要にも迫られた。そうは言ってもいきなり「直ぐ更新契約に来てください」と言うワケにもいかず、先ずワンクッション入れるために家主さんのお宅で話し合いを持つことにした。
■留守電に3度
家賃は最初の5万円から変わっていない。隣に同じ造りの貸家があって、そこの家賃は8万になっている。そこで取りあえず6万に値上げし、次の更新の際に1万値上げして7万にし、そこで据え置くことで家主さんも了解していた。ところが、この不況で家賃が滞り始めたのである。滞納は7カ月分にもなっていた。
家主さんからの連絡を受け、入居者の携帯に電話をして留守電にメッセージを残すこと3度。ドアに「連絡ください」と張り紙をするが連絡は入らない。家主さんは近所にお住まいなのでで、「何度も留守電を入れ、張り紙もしましたが何の連絡もありません。翌日張り紙が無くなっていたのでメモは見ていると思います。ひょっとすると不動産屋をなめているのかもしれません。家主さんも張り紙をしてみてもらえませんか?」と頼むと…、「それは嫌だなあ、オタクで何とかしてよ」と言う。
■利息分だけは
家主さんは無責任な人ではないが、嫌がる理由がある。入居者の職業は「テキ屋」だった。全国の祭りを回って縁日などで屋台を出して、暴力団とも繋がりがありそうなのだ。「下手に催促して怪我でもしたら…。不動産屋に何とかしてもらおう」という腹である。だが、命懸けの取立てであっても原則「タダ働き」だ。「手間賃を出そうか」とは言ってもらえない。私もタダで命を懸けるのは真っ平なので滞納利息分だけ当方でいただいた。危険手当、いや私の命の値段、たったの2万円である。(坂口有吉不動産・社長)























