第67回 住宅ジャーナリスト櫻井幸雄 慧眼を開く「平均1億円」の陰で深まるいびつさ
住宅新報 2026年8月4日 号 4面

上半期の首都圏価格
首都圏の新築分譲マンションの平均価格は1億135万円。東京23区内は1億4292万円。不動産経済研究所が7月21日に発表した2026年上半期の新築分譲マンションの1戸当たり平均価格だ。
上半期の集計で1都3県の平均価格が1億円を超えたのは初めて、とされる。
ちなみに、同研究所が1月26日に発表した「2025年のまとめ」によると、首都圏全体の平均価格は9182万円で、23区内は1億3613万円。4月20日に発表された「2025年度」のまとめによると、首都圏全体は9383万円で、23区内は1億3784万円……こうやって見比べると、順調に値段が上がっていることが分かる。
上半期で首都圏全体の平均価格が1億円を超えたことも含めてニュース価値が高い発表である。
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しかしながら、この発表に対する反応は必ずしも大きくない。一般の反響は冷ややかと言ってよいだろう。
今、まさにマイホームを探している人は、神奈川、埼玉、千葉、そして東京市部の新築分譲マンションはそんなに高くないことを知っている。7000万円を超える住戸が増えたが、駅から離れれば6000万円台、5000万円台で購入できる。その状況で「首都圏全体の平均価格が1億円超え」といわれても、計算上の話と心得ているので、もはや驚かない。
一方、マイホームを買う気がない人たちは「マンション値上がり」のニュースに慣れてしまい、驚きが薄い。
そのため、発表に対する関心が薄いのだ。なので、マスコミは、住宅に関する新しい話はないか、と探しまわっているのが実情である。
この状況で、「都心マンション値下がり」とか「住宅ローン破綻急増」といった事象を証明するデータが出たら、一斉に飛びつくだろう。数字を基に、大げさな記事が出ないとも限らない。その結果、負の連鎖で不動産市況が悪化の一途をたどる……それが、不動産不況が起きるときの典型的パターンだ。
それは避けたいと考えるので、安易な値下げは行えない。それが、首都圏不動産業界の本音というものだろう。
ここ数年、東京23区内の新築分譲マンションは投資目的の購入者を集めて、大いに潤った。その結果、実需層の購入マインドが下がってしまったのも事実だ。
近畿は極端な状況にない
ところが、近畿圏ではそこまで極端な状況がない。
大阪・梅田や中之島周辺で投資向け物件が人気を高めたが、盛り上がりは首都圏ほどではなかった。
一方で、実需層の購入マインドは下がらなかった。その結果、北摂では販売好調物件が目立つ。また、京都では中心部で異常とも思えるほど高いマンション人気が生じている。全方位で、「まあまあ」な状況が生じているのである。
思い返せば、不動産業界にとって「おしなべて、まあまあ」はよい時期だった。近畿圏はその中にいると考えられる。対して首都圏の状況は、かなりいびつだ。近畿の状況がうらやましいのではないだろうか。
このいびつさをいかに整形してゆくか……これから住宅ローン金利が上がって行くなか、大仕事になるのは間違いない。





















