第66回 住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄 慧眼を開く 築29年社宅を賃貸マンションに再生
住宅新報 2026年7月28日 号 4面
東急不動産が賃貸マンション「コンフォリア・リヴ湘南鵠沼」の入居者募集を始めた。場所はJR東海道本線と小田急江ノ島線を利用できる藤沢駅から徒歩12分、もしくは小田急江ノ島線本鵠沼駅から徒歩9分の住宅地内。都心への通勤も可能な賃貸マンションである。
同マンションは社宅だった建物(築29年)を昨年、東急不動産が取得。約1年かけて改装した。3階建て2棟構成で全48戸は79.49m2から81.82m2の3LDK。周辺の賃貸アパートと比べて倍くらいの広さになる。
だから、家賃が高く、月額21万4000円から25万3000円となっている。ちなみに、敷金1カ月で、礼金ゼロの普通借家だ。
これは、藤沢市に隣接する横浜市内の分譲賃貸と同程度の家賃設定となる。近年、分譲賃貸で3LDKの広さは70m2前後のことが多い。それよりも10m2程度広いことを勘案すると、この家賃設定に納得感が出てくるはずだ。
その上で、敷地内にはサーファー向けの設備を追加している。
建物外に温水が出るシャワーを設け、建物内にサーフボードの保管場所を設けている。これで、休みの日はサーフィンを楽しみたいという層を取り込む狙いである。
湘南の海までは最短で約2.5キロメートル。湘南の海でサーフィンができる場所は限定されており、江ノ島や鎌倉周辺では許可されない。鵠沼海岸から西(辻堂や茅ヶ崎、平塚)なら可能なので、「平日は都心に通勤し、休日はサーフィン」という生活が実現しやすい。だから、東急不動産は築29年の社宅を入手したのではないか。風致地区内であるため、分譲マンションを開発しようとすると、いろいろ面倒な問題が生じそうだ。
その点、既存の建物を生かし、改装によって賃貸マンションとする計画のほうが現実的と思える。
ちなみに、建物改装に当たって建築確認申請は行っていない。「不要ですよね」という言質を藤沢市ではなく、神奈川県に取ったという。そのへんにも開発の妙がありそうだ。
今、マンション開発は用地取得で苦労している。便利な場所は土地価格が上がってしまったし、郊外で駅から離れた場所は果たして分譲事業が成立するか不安があるからだ。
その点、分譲ではなく、賃貸であれば新たな開発が考えられる。これから先、インフレによって郊外の賃貸で家賃上昇が続けば、賃貸の展開は有望な分野となるだろう。
「コンフォリア・リヴ湘南鵠沼」はその可能性を探る、意欲的な物件と評価される。























