第63回 住宅ジャーナリスト櫻井幸雄 慧眼を開く 完成売りが奏功、狭域需要をつかむ
住宅新報 2026年7月7日 号 4面
6月18日、不動産経済研究所が発表した「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年5月」でこの5月に40戸が即日完売したマンションが発表された。
JR常磐線柏駅から徒歩10分に立地する「ルネ柏ザ・レジデンス」だ。
全53戸のうち第1期1次で40戸が販売され、最上階角住戸が7倍の抽選となったが、それ以外は抽選なしの住戸が多かった。
価格は約58~80m2の2LDK~4LDKが5298万円から8998万円。中心となるのは6000万円台の3LDKなので、周辺相場から見て特に割安というわけではなかった。また、柏駅の東口側であることも売れ行きに不安を感じる要因だった。柏駅では高島屋ステーションモールや高級ブティックが集まる駅西側の人気が高いからだ。
そこで、間取りや外観に工夫を凝らし、その良さが分かるように今年3月に建物が完成するのを待って、竣工売りを行うことにした。
それが結果的に奏功した。
販売を始めたタイミングでナフサ不足によるマンションの竣工遅れが懸念されるようになった。また、住宅ローンの金利がじわじわ上がり始め、それに伴って金融機関の審査が厳しくなってきた。
いずれも、すでに建物が完成し、9月入居予定の「ルネ柏ザ・レジデンス」にとって、関係ない話。それが追い風になって、販売に弾みがついたのは事実だろう。
加えて、間取りが魅力的でもある。同マンションでは、一部住戸に「エクストラ・リビング」という間取りを提案している。リビング全体がバルコニーに面するのではなく、一部を腰高窓からダイレクトに外が見える形状にしたものだ。
この形式はアウトフレームで採用されやすいが、同マンションは順梁である。あえて、バルコニー側に居室を持ち出したわけだ。
バルコニーの幅が狭くなるのだが、奥行は深い。その結果、バルコニーのプライバシーを保ちやすいという印象も生まれそうだ。
「エキストラ・リビング」は、中住戸で採用されており、単調になりがちな中住戸におもしろさを演出する効果も大きいと思われた。それも人気を高めた理由だろう。
とはいえ、広域で集客できたわけではない。関心を示したのは柏駅東口側の居住者が中心だったので、狭域で人気を集めたマンションということになる。
狭域での注目物件の場合、大規模を売り切るまでのパワーはないのが普通。せいぜい100戸程度までだろう。だから、1期でなるべく多くの住戸を売ってしまう戦略は正しいと評価される。この春の成功事例だろう。























