第61回 住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄 慧眼を開く 東京都アフォーダブル住宅の謎
住宅新報 2026年6月23日 号 4面
東京都が5月29日からアフォーダブル住宅の募集を開始した。計画では、東京都住宅供給公社の既存公社住宅を活用した住戸が1200戸……これは今年度から毎年度200戸を供給する予定。そして、東京都と民間の共同出資で組成した「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」による住宅を350戸ほど供給する予定となっている。
そのうち最初の募集として5月29日から約1カ月募集されるのは、官民連携ファンドによるアフォーダブル住宅だ。
その仕組みが理解しづらい。
新聞、テレビで盛んに取り上げられているのだが、ファンドを活用して家賃を下げる工夫について解説するものが皆無といえる状況。「相場より20%以上家賃が安い住宅を東京都が提供しはじめた」ということに終始している。
不動産のファンドは、本来、高い収益を上げて出資者により多くの利益を分配するもの。そのファンドを活用して相場より家賃を下げる、という仕組みが分からない。
一般の読者、視聴者はそんなことに興味はないので、新聞、テレビはあえて触れないのだろうが、そこ重要でしょう! だ。
なので、東京都の資料をじっくり読み込み、さらに官民連携ファンドの一つ「野村不動産アフォーダブル住宅投資事業有限責任組合」に踏み込んだ質問をしてみた。同ファンドの運営は野村不動産と野村不動産投資顧問で、京王電鉄が共同出資者として参画。さらに、入居者の募集と維持管理などを野村不動産パートナーズが受け持つ布陣だ。
同ファンドが扱うのは新築マンションと築浅マンションを取得したもの。今回、募集された2物件はいずれも新築マンションとなり、江戸川区内に立地。家賃は50m2から55m2程度の2LDKで約15万円から17万円程度。管理費を含む家賃となり、周辺相場と比較して2割程度安い設定という。
驚くほど安いとはいえないが、新築であること、そして立地が良いことを勘案すると、確かに割安と判定できる。
疑問として沸くのは、なぜファンドで家賃を安く設定できたのか、だ。答えは、東京都の出資金に対する配当を低く設定しているから。今回、東京都はファンドへの出資金として100億円を用意し、4つの官民連携ファンドに対して20億円から40億円を分配した。その出資金に対する配当を低く設定しているため、相場より低い家賃設定が実現するわけだ。
東京都としては、配当が低くても、入居者の募集、家賃徴収、維持管理をファンドに委託できるため、十分にメリットがあるのだろう。賢いスキームが構築されているのである。
以下続く。























