第60回 住宅ジャーナリスト櫻井幸雄 慧眼を開く 住宅市場、好機は何度もやって来る
住宅新報 2026年6月16日 号 4面
住宅ローンの利上げ報道が続いている。ナフサの流通が滞り、新築分譲マンションの引き渡しが遅れるかもしれない、と不安をあおるニュースも多い。そして、中古マンションの売れ行きが落ちてきたので、高値を維持できないとも……。いずれも、新築分譲住宅の販売にはネガティブな情報だ。少なくとも、購入意欲を盛り上げる効果はない。
それに加えて、注目物件が発売されたとの記事も絶えている。せいぜい「グラングリーン大阪」で最後の販売が始まる、というニュースが出た程度だ。つまり、マイナス要素が増え、プラス要素が見当たらない状況で、これでは、集客に苦労する物件も多いだろう、と心配が募る。
景気の「気」は気持ちである、気持ちが盛り上がらなければ、売れ行きも上がらない。住宅の販売現場では昔からそう言われている。消費者の気持ちは上がったり、下がったりするもの。その気持ちが下り坂に入ったということだろう。
それはまあ、仕方がない。
不動産市況は良いときもあれば、悪いときもある。上り坂があれば、その反対もあるのは当然である。
思い返せば、今回の登り坂は長かった。都心マンションの値上がりが始まったのは2014年とか15年あたりから。17年には「ここまで値上がりしたら、暴落は間近」と打ち出した経済誌もあった。結局、鼻で笑われ、つい最近まで価格が上がっても、売れ行きは好調だった。
その間、思いもよらぬ価格で売れたマンションも出た。そのような時期があったのだから、別次元に入ったとしても、がっかりすることはない。そうなるのは、当然の流れであるからだ。
この状況を嘆き、あんなに景気の良い時代は二度と来ない、とがっかりする人も出てきそうだ。が、嘆くことはない。上り坂、下り坂があるのは当たり前であるからだ。
私自身、この40年ほど上り坂と下り坂に翻弄された。
初めてのマイホームを購入する直前、1984年に「広尾ガーデンヒルズ」が新築分譲された。当時、5000万円台で購入できる2LDKがあったのだが、頭金が足りず、申し込みできなかった。その後、バブル経済となったので、「最後のチャンスを逃した」と失意に暮れたものだ。
しかし、最後ではなかった。その後、2000年から都心マンションブームが起き、「東京ツインパークス」では3000万円台の1LDKが販売された。更に、東日本大震災の後、12年から14年くらいまで格安マンションがいくつも目の前を通り過ぎた。
なので、「最後のチャンス」などと思うことはなくなった。 大丈夫、好機は何度もやってくる。購入者にとっても、不動産会社にとっても……。























