第57回 住宅ジャーナリスト櫻井幸雄 慧眼を開く 必要もない融資を受けた法人が購入
住宅新報 2026年5月26日 号 4面

4月10日に、「マネーポストWEB」というニュースサイトで、なぜ都心マンションは「2020年から高騰」したのか? コロナ禍の不動産業界で起きていた「奇異な現象」という記事を発表した(1週間程度Yahoo!ニュースで誰でも読めたが、その後、有料会員しか読めなくなった)。
記事の主旨は以下の通り。
都心マンションの高騰が激化したのは2020年から。それ以前も価格上昇が見られたが、20年以降、急激な上昇を示すようになった。
まず中古マンション価格が上がり、次いで新築分譲マンションも高騰した。
これはおかしな話である。経済が停滞し、新築分譲マンションの多くが販売を自粛していたのに、価格が爆発的に上がるなんて……。その理由として、コロナ融資で必要もない融資を受けた法人が「ローリスク・ハイリターン」が見込める都心マンションに群がったからではないか、というのが記事の内容だ。
この記事、一部で高評価だった。
評価してくれたのは、不動産に詳しい人、そして編集業界だ。
一般の読者は、ポカンとする人が多かった。それは、「都心マンションが値上がりしたのは中国人が買いあさっているから」という思い込みがあるからだろう。それなら、馴染みのあるロジックなので、安心して読んでくれる。しかし、「コロナ融資で法人が買ったから」といわれても、なんのことか分からない。そういう先取り記事は、往々にしてスルーされやすいのだ。
しかし、不動産業者や編集者などその道のプロは反応する。
反応した結果か、5月に入り、同様の記事を目にするようになった。「コロナ融資」「法人購入」をキーワードにマンション高騰を説明する記事である。
そのような記事が増えてくると、一般の読者にも浸透してくる。ここにも書いてある、あそこにも書いてある、という状況が出てくることで、「これは本当らしい」と信じるようになる側面もあるだろう。
つまり、最初に出した記事より、2番目、3番目の記事のほうがウケるわけだ。
ただし、わかりやすいロジックの記事であれば、話は別。「中国人が買いあさっているから」とか「東京五輪の後、マンション価格が暴落する」など、誰でも思いつきそうな主旨の記事であれば、最初から大ウケする。
しかし、「コロナ融資で、法人がマンションを盛んに買った」というのは、一般の人にとっては初耳の話。想像もしていなかっただろう。
そのようなニュースは、浸透するまで時間がかかるというわけだ。
が、それでよいのかもしれない。
この先、「法人購入」が問題視されるようなことがあれば、政府による規制が生じるかもしれない。それは、今の不動産業界にとって迷惑な話であるからだ。
もっとも、それで実需層が戻ってくれば、それはそれで喜ばしいこととなる。法人購入もいずれ頭打ちになるのは間違いないし、その傾向がすでに出ているとの見解もある。これからのことを見据えれば、実需層に熱気が戻るほうが好ましい。
じつに、悩ましいところなのである。





















