【GW特集 減る日本人、増える外国人】外国人と共に都市価値を向上 人口減少時代の「滞在」と「住まう」の新戦略 外国人エグゼクティブ向け賃貸住宅 顔の見えるコミュニティー
住宅新報 2026年5月12日 号 13面
同社は、新しいホテルの形として、インバウンドの多人数・中長期の滞在ニーズに応えるレジデンシャルホテルをブランド名称『&Here』を冠して展開している。25年9月には、第3弾で全65室の『&Here SHINJUKU』を開業している。施設運営は、グループ企業の日鉄興和不動産ホスピタリティ(東京都港区)が担う。開発から運営までの一貫体制でブランド価値を構築している。ホテルでありながらも住まいの機能を合わせ持つ。従来の宿泊施設と差別化させ、都市滞在の新しい選択肢としている。
東京・新宿は、繁華街と新宿御苑の緑が共存する立地特性から、『NEO PUBLIC HOUSE ~緑に囲まれた新しい街の社交場~ 』をコンセプトとして掲げる。同シリーズは、24年開業の『同 TOKYO UENO』、25年開業の『同 OSAKA NANBA』に続く展開となる。立地ごとにコンセプトを変え、空間やサービスに生かしている。個性を体現させた施設づくりを進め、全体の95%は外国人が利用している。
同社都市事業本部ホテル事業部部長の勝瀬信氏は、「新しくも懐かしい、特別な体験を提供する」と説明する。「インバウンドは1カ所を拠点に決め、そこから複数の都市を巡る傾向がある。観光後は家に帰るように当社施設に滞在して〝住まう感覚〟で利用している」(勝瀬氏)。客室は約40m2の4人利用を基本にキッチンや独立洗面台、浴室を備え、中長期滞在に対応する。
ハード面の整備に加え、重視するのがソフト面にある。「各地域にしかない価値がある。それを読み解き、体験価値で提供する」(勝瀬氏)。ブランド名の〝&〟には人や場所とのつながりを、〝Here〟は、その場所ならではの時間を過ごしてもらう意味を込める。施設単体でなく、「街の魅力を含めて提供することが価値になる」(勝瀬氏)。運営面はオンラインチェックインなどで省人化する一方、人的サービスを重視する。多国籍なスタッフが日本の〝おもてなし〟を体現する。地域の飲食店を紹介するマップを作成し、イベントの連携、地元アーティストの作品展示を通じ、地域との接点づくりを支える。それらの取り組みが滞在者の満足度向上と地域経済への双方の波及効果になる。
今後は福岡、那覇、札幌にも広げ、新宿や渋谷は施設を深掘りし、開業済みと合わせ14棟体制を視野に入れる。オフィスからのコンバージョンなども挑戦する。「デジタル化で業務と利用者の手間を減らす。その分〝おもてなし〟を充実させた〝記憶に残る体験〟で再訪につなげる」(勝瀬氏)。今後は、ノウハウを生かし、施設運営受託や他社オペレーターの連携を視野に事業形態の拡張も見据える。
外国人との関係構築は、同社で目新しい取り組みではない。65年に外国人エグゼクティブ向けの高級賃貸住宅『HOMAT IMPERIAL』(東京・六本木)を皮切りに、『ホーマット』シリーズを展開してきた。高度経済成長期に外国企業が進出し、外国人が安心して暮らせる住宅が不足した。欧米型の居住スタイルを取り入れた先駆的な試みで開始し、半世紀以上にわたって外国人の居住の受け皿として機能している。
教育・医療・商業施設など生活インフラが整い、東京・広尾、麻布、青山、赤坂、各国の大使館が点在するエリアに立地する国際色豊かな環境が安心感につながる。同社住宅事業本部賃貸住宅部長の梶原誠氏は、「高級感がありつつ、平均30戸規模で〝顔の見えるコミュニティー〟を大事にする」と説明。「日本で良い仕事をしてもらう。家族で素晴らしい思い出をつくり帰国してもらう。一番の当社の思いにある」(梶原氏)。それが日本への貢献になる。
建物デザインでは、石畳や石塀、灯籠など〝和〟のテイストを取り入れ、日本らしさを感じられる空間を演出している。障子から庭を望めるなど、日常の中で日本文化を体感できる工夫を施す。ソフト面でも、外国生活を理解した管理人がコンシェルジュ的な役割を担い、24時間体制で親身に生活を支える。「自動化や効率化が求められる時勢だが〝人の手〟によるきめ細かな対応が安心感を生んでいる」(梶原氏)。
施設間を横断した各種イベントを通じたコミュニティー形成も特徴にある。ケータリングパーティーや利き酒イベントなどが、入居者同士の温かな交流の機会を育む。多様な国籍の異なる文化背景を持つ居住者が自然に関係を築ける。生活満足度の向上と共に各地域との関係性が深まる。
現在は同様のコンセプトを持つブランドを含め、9棟250戸超を運営する。長年の実績で蓄積した運営ノウハウは、物件価値の維持に加え、地域の価値向上にも寄与し、「最近は日本人富裕層の入居も増え、外国人と日本人が共存する居住環境に進化している」(梶原氏)。
時代の変化に合わせ、設備更新やリノベーション、建て替えによる再生の取り組みも進めている。高台の希少性の高い立地を生かし、現代のライフスタイルに合わせた住まいに進化させ、長期的に資産価値を維持する。比較的に近いエリア内で複数の物件を展開し、施設を越えたコミュニティーの形成やエリアマネジメントの実践につなげて〝地域共生〟を推進していく。
同社は短期滞在から長期居住まで外国人との接点を多層的に広げる取り組みを推進し続けている。外国人を〝受け入れる対象〟ではなく〝共に価値を創出する存在〟として捉える視点は、今後の都市開発に求められている。人口減少時代の都市の持続性を支える一つの方向性を提示する。
























