住宅ジャーナリスト 櫻井幸雄 慧眼を開く第55回 心理的な「1億円の壁」を崩せるか
住宅新報 2026年5月12日 号 4面
首都圏の準都心部や近郊外において、70m2換算で1億円を超える新築分譲マンションを取材するケースが増えた。千葉県や埼玉県内でターミナル駅に近い超高層マンション、もしくは東京23区内でも外側に位置する住宅エリアで駅徒歩圏に建設される低層マンションなどで、億ション住戸が目立つのである。
それは、「新築分譲マンション価格上昇」の報道が増えたことの影響ではないかと、私はみている。
たとえば、2025年4月1日から26年3月31日の25年度、首都圏の新築分譲マンションは平均9383万円で、東京23区内の平均価格は1億3784万円だったという報道があった。4月20日に不動産経済研究所が発表した「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年度」を基にしたものだ。
東京23区内で初めて平均価格が1億3000万円を超えた、と報じられた。
これを景気の良い話と受け止める人もいるだろう。
しかし、首都圏の郊外部でマンションを新規販売する部隊にとっては必ずしも好ましい話題ではない。6000万円台の3LDKを多くしても、「首都圏全体の平均価格は9383万円」などと報じられると、私には無理とマンション探しをハナから諦めてしまう人が増えてしまうからだ。割安なマンションが意外に無視されてしまう……それが、今のマンション市況ではないだろうか。
そこで生じているのが、郊外でも駅に近いなど好立地の物件を増やす動き。駅近とか、歴史ある人気住宅地で、環境のよい場所で新築物件を増やすわけだ。
立地が良い分、当然ながら販売価格は高くなってしまう。3LDKが8000万円以上で、1億円を超える住戸も生じる。
高額だが、「首都圏全体の平均価格は9383万円」というニュースを見て、それでもマイホームを買いたいと考える人は検討してくれるだろう、と考えるわけだ。
なかには、当初8000万円台での販売を考えていたが、人気が高そうなので、価格設定を上げる。その結果、1億円を超えてしまった、というケースもありそうだ。
根強い人気の都心タワマンも、近年は面積圧縮の動きが強まった。価格が高く、狭い住戸は敬遠されがち。特に、子育て中、もしくはこれから子育てしようとする実需層はがっかりしがち。そこで、ゆとりとか住む楽しさを求めて、準都心、近郊外に目を向ける。その際、注目されやすいのが、駅近のタワマンや落ち着いた住宅地内の低層マンションということだろう。
都心を諦めても、将来値上がりしそうな駅近マンションや人に自慢できる低層マンションを好むわけだ。が、そこで問題になるのが「1億円の壁」。販売価格が1億円を超えると、関心を持つ人は多いが決断できない、という状況が生まれる。
その壁を崩すことができれば、首都圏のマンション市況はもう一段高みに上がることができるのではないだろうか。























