不動産学の魅力 明海大学 不動産学部 第98回 機器を使った空き家情報の生成 デジタル技術で潜在価値を掘り起こし
住宅新報 2026年4月28日 号 7面
春休みに連携する大分県玖珠町に点在する空き家の実態調査を実施した。町を歩くと、構造は維持されているものの、日常の手入れが行き届いていない住宅が目に留まった。閉ざされた雨戸、郵便物が溢れるポスト、敷地を覆い尽くす雑草が、居住が途絶えて久しいことを示している。 興味深いのは、周囲には整然と管理された住宅が並んでいる点だ。同じ通りながら、管理状態の差が残酷なほど明確な光景が各所で見られた。
町の担当者にうかがい、背景には根深い構造的課題があることが分かった。遠方に住んでいて地理的に管理が困難なケースや相続後に親族間で活用方法が定まらず歳月だけが経過してしまうケースが非常に多いという。所有者には多額の費用がかかる解体や手続きが煩雑な売却・賃貸に踏み出すには心理的・経済的なハードルが高い。空き家問題は単に建物の老朽化ではなく、所有者のライフスタイルや家族事情が複雑に絡み合っていることを強く実感した。
調査の柱は機材を使って記録し、空き家バンクに掲載することである。まず、外観や周辺環境はドローンを用いて上空から撮影した。これにより、地上からは確認できない屋根の損耗状態や敷地の全体像、隣地との境界や景観が一目で把握可能となる。高所点検の安全性を確保しつつ、調査効率を高めるドローンの有用性は極めて高い。
間取りはレーザー距離計で内法寸法と天井高を測定し、室内は360度カメラで撮影した。静止画では伝わりにくい部屋の形状やつながり、台所や水回りの状況を、その場にいるような臨場感で伝達できる。こうした視覚情報は、空き家バンクの閲覧者が移住や購入を判断する際の決定材料となるはずだ。
調査を通じて再認識したのは、空き家は単に「処分すべき負の遺産」ではなく、地域の「活用すべき資源」ということだ。保存状態が良い住宅もあり、少しの修繕で居住可能なものも含まれていた。潜在的な価値をデジタル技術で掘り起こし、情報を適切に発信することが、新たな居住者との出会いを創出する鍵となるだろう。
今回の取り組みが、直ちに劇的な変化を生むわけではない。しかし、現状を正確に把握し、詳細に記録し、広く公開することこそが、空き家対策の最も誠実な出発点である。学生でも利用できる機器を使い、行政と緊密に連携しながら、継続することが重要である。
【教員のコメント】
空き家はビジネスにならない、が宅建業者のほぼ共通認識だが、空き家には法学、経済学、工学に係る多様な問題があり、正に不動産学の教材である。社会体験と不動産スキル両面で学修に好適で、産業の隙間を補完する機能も着眼点である。
(中城康彦)

























