誠不動産 鈴木誠社長に聞く 仲介の価値は「人」が支える 効率化で揺らぐ取引の重み
住宅新報 2026年4月28日 号 6面

一度きりで終わらない関係
足元の賃貸市場は、数年前から続く供給不足の影響で空室が極端に少ない。物価高や賃料上昇も住み替え意欲に影響し、流動性は鈍る。「条件の良い物件はすぐに埋まり、『とりあえず申し込み』で部屋を押さえる動きも広がる」と鈴木社長は話す。内見を経ずに契約に至るケースも珍しくないという。
紹介制でつなぐ顧客接点
こうした環境の中で、同社はポータルサイトに依存せず、完全紹介制で顧客と向き合っている。連絡の大半はLINEで行い、対面せずに契約まで完結することもある。
それでも鈴木社長が重視するのは「関係が続くこと」だ。顧客は年齢と共にライフステージが変化し、単身からファミリーへと住まいのニーズも移り変わる。その都度、再び相談が寄せられる。「一度きりではなく、関係が続くことが本質ではないか」と語る。顧客の要望を受け、今年から紹介制による売買仲介にも対応を始めた。
一方で、現場の変化には違和感もある。オンライン化の進展により、内見予約や契約手続きは簡素化されたが、「とりあえず申し込み」「簡単にキャンセル」といった行動も増えたとし、警鐘を鳴らす。
「ボタン一つでキャンセルできる仕組みが、申し込みの意味を軽くしている」。管理会社との関係も希薄化し、担当者の顔が見えないまま取引が進む場面も少なくない。利便性の向上の一方で、取引の重みや現場のモラルが揺らいでいると指摘する。
業界をめぐる新たな動きにも敏感だ。エージェント制度については「働き方としては良い仕組み」と評価する一方で、ルールを守らなければ制度は機能しないとみる。実務経験の乏しい人材が関与すれば、トラブルや不正につながるリスクもある。賃貸のフルコミッション現場では、管理会社に対して横暴な要望をする〝ブローカー〟のような存在も耳にするという。
「制度を広げるなら、事業者側が責任を持って教育やコンプライアンスを徹底する必要がある」。自由度の高い仕組みであるほど、運用側の責任が問われる。
責任伴う現場
では、仲介の価値はどこにあるのか。鈴木社長は「顧客に対して責任を負うことが本質」と言い切る。資格や経験は、その責任を担保するためにある。単に情報をつなぐだけではなく、意思決定に伴走し、結果に責任を持つ。その積み重ねが信頼となり、次の仕事につながる。
効率化が進む中でも、現地に足を運び、空気感や匂い、日当たりを確かめながら生活を想像する――そうしたプロセスは完全には代替できないとみる。対応の質を高める企業と、仕組みに寄せる企業との間で「二極化が進むだろう」と鈴木社長は指摘する。
不動産取引は、人生の中でも大きな意思決定の一つだ。だからこそ、その過程を単なる手続きではなく、納得や安心を伴うものにすることが求められる。効率化の時代にあっても、信頼と責任を軸とした価値は揺らがない。その担い手としての「人」の役割が、改めて問われている。























