第49回 住宅ジャーナリスト櫻井幸雄 慧眼を開く 地価は上昇も アップサイドそろそろ終了
住宅新報 2026年3月24日 号 4面

3月17日に今年の公示地価が発表された。「全国の全用途平均が5年連続で上昇」となったので、公示地価がベースとなる基準地価も路線価も「今年も地価上昇続く」ということになるのだろう。
経済の側面から考えれば、「地価上昇続く」は、好ましい発表となる。景気のよい話だし、預貯金を蓄えた人たちを不動産投資に向かわせる効果が高まる。それで、世の中にお金がまわるようになれば、更に景気が上向く。
都心部で地価上昇が著しいことをアピールすれば、山の近くや海の近くといった郊外部、そして人口減少が著しい地方都市に関心をもってもらうきっかけにもなる。この流れで、平成バブルのときは、千葉の茂原や成田、そして新潟県の湯沢町でマンションや建て売り住宅が好調に売れた。その後、ハシゴが外されて大変だった、という失敗談はもはや多くの人の記憶から消えているし、ハナから知らないという人も増えた。
経済を活性化させる上で、「地価上昇」は魔法の薬のような威力を発揮してくれるわけだ。しかし、それは危険な薬である、と郊外部で1次取得層向きの真面目なマンション、建て売り住宅を手がける不動産関係者は苦々しく思っていた。その思いは今年も続くことになりそうだ。
しかしながら、変化も生じている。
たとえば、今回の公示地価では、地方都市の実情も反映された。「上昇が鈍化」という形だが、地価の落ち着きが認められる都市が増えている。
そして、販売現場を取材して肌で感じる変化は、「高額マンションにアンダー物件が増えた」ことだ。アンダーつまり水面下で販売され、表立って販売活動が行われない物件である。
これは、本来、限られた人を対象にした特別感が魅力になっていた。しかし、現在の都心物件のように軒並みアンダーとなると、特別感も薄れてくる。
それでも、高額のマンションを広く公開して販売するよりもリスクは少ないだろう。リスクとは、売れ行きが悪く、価格を修正するときのことを指す。
公開販売をして価格を下げると、今の世の中、何をいわれるか分からない、というか、よく分かる。「あのマンションが値下げした」と騒がれてしまうのだ。すると、販売活動は絶望的にやりにくくなる。
そうなるよりは、アンダーで販売し、アンダーで値引きを持ちかける……このほうが現実的である。
こっそり値引きで販売した物件が、その先、中古で値上がりすれば、結果的に恩を売ったことになる。すると、別の高額物件を売りやすくなる、というのが富裕層に対する都心マンションの正しい売り方というものだ。
一部の物件では値引きする可能性も含めてアンダーを選択しているとしたら、今後、都心マンションはアンダーだらけになってしまいそうだ。
少々寂しい思いはするが、2020年コロナ禍を契機に始まった今回の価格上昇も、そろそろ終了ということだろう。





















