「令和時代の賃貸ビジネス」 ~コンサルタント沖野元の視点~ 第95回 自らがお客になってみることの意義
住宅新報 2026年3月17日 号 12面

普段不動産業務に従事している者も業務ではなく自ら不動産を賃貸したり売買することがあるだろう。これから3回に渡って筆者のプライベートな賃貸・売買の経験とそこで得られた知見について書いていきたい。
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筆者はこの経験を通して、逆に自分がお客になることで得られるものが少なくないことに気づいた。これはどんな業種でも言えることである。たとえば、飲食店に勤務して接客をしている者が他の飲食店でお客として接客を受けることで感じることはきっとあるだろうし、それが自らの仕事に影響を及ぼすことは十分に考えられることである。当然不動産業においても同じことが言える。
まずは筆者が住居を借りた経験についてである。UR都市機構(以下UR)のファミリータイプの賃貸物件を借りたときのこと。築浅で小規模ではあったが、いわゆる「団地」と言っていい。URは昭和30年の日本住宅公団を前身とする独立行政法人である。独立行政法人は国から独立した法人格であるが、国の行政サービスを担う機関なので公的な機関と捉えられている。筆者は普段民間の賃貸住宅を管理しているので、こうした公的機関の賃貸住宅がどんなものか興味があり、一度居住してみたかった。
まず入居前に感心したのが、エアコンなどの設備機器に点検シールが貼ってあり、いつ点検したかが分かることであった。これは入居前点検したことが自分たちにもお客様にも分かり、一石二鳥である。また、住んでみて初めて分かったことがいくつもあった。団地は敷地が広く、植栽が多い。その植栽は四季折々の花が咲くように工夫されていて一年を通して楽しめた。生花が入居者の満足感を高めることを実感したのである。敷地の広さは違うが民間の賃貸住宅でも応用できる。
掲示板の使い方が上手だとも感じた。集合ポストの近くに大きな掲示板があり、そこに頻繁にさまざまなお知らせが掲示される。排水管の高圧洗浄や植栽剪定の日程などの定期的な業務もあるが、何かトラブルが起きた際の注意事項(音やタバコなど)もある。これを見て筆者は掲示板の使い方を学び、掲示板とは入居者とのコミュニケーションツールであるということを確信するに至り、自らの業務にも応用した。
このように住みながら学ぶことができ、それが自らの管理業務のブラッシュアップになったのはそもそもその目的で生活していたということもある。そこに意識が及ばない限りいくらお客の側に立っても得られるものは少ないだろう。
次回は弱いと感じたインターネット環境について、同じく公的賃貸住宅である東京都住宅供給公社に居住した経験も踏まえて書いてみたい。
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【プロフィール】
おきの・げん 日大大学院修了。不動産コンサルタント兼不動産系研究者。不動産実務検定講師。リーシングジャパン代表取締役。執筆・講演多数。























