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スタンダード会員限定日本デザイン振興会・深野理事長に聞く2025年度グッドデザイン賞 「デザイナーの熱量に着目」 DLT木造仮設住宅、大屋根リングなど

住宅新報 2025年12月23日 号 9面

資格・実務
  • 日本デザイン振興会・深野理事長に聞く2025年度グッドデザイン賞 「デザイナーの熱量に着目」 DLT木造仮設住宅、大屋根リングなど

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  • 深野弘行日本デザイン振興会理事長

    2 / 3深野弘行日本デザイン振興会理事長

  • 大阪・関西万博のシンボル的存在にもなった木造建築物「大屋根 リング」は、今回創設の「未来社会デザイン特別賞」を受賞した

    3 / 3大阪・関西万博のシンボル的存在にもなった木造建築物「大屋根 リング」は、今回創設の「未来社会デザイン特別賞」を受賞した

 ――「はじめの一歩から ひろがるデザイン」の意図は。

 「我々の暮らしから始まって、社会を良くしていく力を持ったデザインを見つけ、それを評価し、更に後押しし、広げていくことがグッドデザイン賞の目的。社会や暮らしを良くするデザインとは、必ずしもマーケットの大きさや収益性といったビジネス的な指標だけで測れるものではなく、むしろデザイナー個人の「何としてもこれを実現したい」という熱量から始まっているのではないか。そうした出発点に注目していきたいという思いが〝はじめの一歩〟と理解している」

 「審査委員長・副委員長が前年の審査を通じて、デザインの可能性が考えて提言する活動であるフォーカス・イシューでも紹介しているが、デザイナーの思いが開発の出発点だった。更に、ユーザーや住民など様々な人の共感を得て、力にしながら輪を広げていくことで、力のあるデザインが立ち上がっていくというプロセスが、テーマにつながった。審査員からは〝巻き込まれ力〟といった言葉も出たが、そういうところにデザインの力の源泉があるのではないか」

 「今年もそうした傾向があちこちに垣間見えた。今回大賞を獲った『DLT木造仮設住宅』=写真㊤=は、阪神淡路大震災以来、災害に対して建築の面からも何とかできないかという強い思いを持ち続け、令和六年能登半島地震での迅速な対応につながった。更に地元の工務店を巻き込み、木材の関係者など、チームがつながっていった。木材も特殊なものではなく一般流通材を使い、更に、接着剤を使わず、ダボを通して板を束ね、モジュールにして建物を建てるDLTという工法なので、大きな工場がなくても作れる。完成後は仮設住宅ながら〝ずっと住み続けたい〟といった声もあるという。このイノベーティブな取り組みは、当事者の強い問題意識や思いが結実した」

 ――大屋根リングを始め、今年開催された大阪・関西万博関連の上位賞も目立った。

 「『大屋根リング』は、万博の思想哲学をよく表していると同時に、場所探しや雨宿り、待ち合わせ、更に猛暑でも風が通り暑さをしのぐといった実用の両面で効果が非常に大きかった。日本在来のヌキの工法を使った木造建築をこれだけのスケールで作り、更に能登の住宅も含め、再利用する話も進んでおり、非常に大きなメッセージを出すことにつながるだろう。東京でも大きな木造ビルを作ろうという動きがあるが、そういう刺激にもなり得るなどの意味で、今回創設した『未来社会デザイン特別賞』に選ばれた。また、だれでも自由に使えるアイコン〝こみゃく〟による『共創型デザイン・コモンズ』や、海洋プラスチックの問題提起をしたパビリオン『ブルーオーシャンドーム』などもベスト100に選ばれた。

 ――住宅・不動産業界も社会課題に直面している感がある一方、直接デザインに関わっていない営業や管理部門はデザインとどう向き合えばよいか。

 「むしろ営業や管理部門はデザインに一番近い業種なのでは。デザインの元々の意味は〝計画をしてそれを実行する〟と言った趣旨だと理解している。実際にデザインのプロセスでは、何が理想で、実現するにはどういった課題があり、どういうものなら社会が受け入れ、またはどういうものが社会にインパクトを与えるかを考えることが重要な部分を占めている。それは、営業部門や管理部門、経営管理部門でも、日ごろからそれぞれの自身の仕事を通じて行っていると思う。コンセプトを組み立てていくこと自体がデザインなので、日々やっていることがデザインに関わっている、つながっている、あるいはデザインそのものなのかもしれない。〝自分もデザインに関わっている〟という意識を持ってはどうか。特に建築・不動産の分野は地域社会に与える影響も大きく、関わるステークホルダーもたくさんいる」

 「デザインは包括的なものだからこそ、影響力があり、社会を変える原動力になる。グッドデザイン賞も同様だ。元々はプロダクトデザインだったが時代を経て広がっていき、いまや様々な社会課題に取り組むための形を伴わないモノを含め、モノとコトの要素を両方含み、両方重ね合ったものが評価されている。社会から求められているのだろう。今年度金賞に選ばれた電気自動車『AIM EVM』などは、モノのデザインと離島の交通、課題を解決するというコトのデザインが融合した典型だ」

 ――住宅・不動産もモノのデザインだけでは立ち行かなくなっている。

 「街をどうするかということと併せて建築と併せて考える方向になっているのでは。金賞を受賞した、個々の公園を同じような整備ではなく、特徴を持たせる取り組み『千代田区公園基本方針2025+公園リニューアル』や、静岡県三島市を流れる用水路だった源兵衛川の取り組み『ホタルが舞い、水中花が咲く清流・源兵衛川』も〝はじめの一歩〟といえる。源兵衛川は30年にわたる美しさを保つ仕組みの構築したことを、〝はじめの一歩〟から市民を巻き込んだ結果として、一つの到達点に至ったものとして評価した点は意義深い。今年を象徴する案件の一つ。モノであるハードとコトが融合したともいえる」

 ――企業内ではデザインの在り方はどう変化し、どういった影響を及ぼしているか。

 「2018年に経済産業省などが発表した『デザイン経営宣言』の趣旨に重なる。デザインは様々な価値を含んでおり、企業にとってはある意味では自分の企業の存在意義をうまく示せるツールになり得る。これまでは企業の中にも様々な部門があり、それぞれ別々にデザインを考えていた。それを企業全体として部門を超え、〝我が社はこういうことを企業の価値として求めていく〟といったことを議論し、それをそれぞれの分野・部門のデザインに落とし込んでいく方向に行くのがデザイン経営ではないか。そのためにはデザイン関係者と経営の中枢にいる人達の距離をできるだけ近づけていこうと、役員などのボードメンバーにデザインの責任者を加えた例がある。企業のデザインセンターを作り、部門を超えてデザインで体現される企業価値のようなものを議論するプラットフォームを作るなど、経営とデザインができるだけ距離が離れないように、自社の存在意義なり価値というのを世の中に問う役割があることを認識することが、デザイン経営宣言の肝だ」

――そういった取り組みの成果は。

 「率直に言うと〝遅々として進んでいる〟といったところ。デザインとは非常に多義的で企業の価値を示すことも含め様々な役割を果たし得るものという理解が広がってきている。それが行き過ぎて、モノの形のデザインを軽視しているのではないかといった批判も出たりするが、モノのデザインとコトのデザインがうまく、融合しながら幅の広いものに育ってきているのでは」

 「デザインがどういう価値を持っているかという認識は前に進んでいると思う。それを実際に個々の企業の経営の中でどう生かすかについては途上にあり、次のフェーズに入っている。グッドデザイン賞も来年70周年を迎える。次の10年、20年でどういう風に進めていくか。今後は、経営層にもフォーカス・イシューの中でインタビューするなど、考えを聞いてみたい」

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