第23回 住宅ジャーナリスト櫻井幸雄 慧眼を開く 住宅購入に変化、実需層に回帰
住宅新報 2025年9月16日 号 4面
今、ネットのニュースでよく目にする不動産関連記事は、マンション価格が上昇したというもの。「また、上がった」という記事がいやになるほど頻繁に出てくる。あとは、困った民泊(なかでも、特区民泊)関連の記事に、バルコニーからの転落事故に関するもの……あまり楽しい記事は出てこない。
つまり、多くの読者が求めているのは、腹が立つことや痛ましい事件のニュースということ。マイホームを買う気がない人(買えない人を含む)にとって、読む気になるのは、そういう話ということだろう。
一方で、投資目的で都心マンションを買おうと目論んでいる人にとって、マンション価格上昇は興味深い記事となる。投資目的の購入者に高額マンションを買ってもらいたい不動産会社にとっても、価格上昇ネタは好ましい。
幅広い読者にウケるので、地価上昇やマンション価格の上昇がしつこいほど記事で取り上げられるわけだ。そこから感じるのは、「実需層はいつのまにか、脇に押されてしまった」との思いである。
もともとは実需層こそが住宅購入の本流であり、ディベロッパーが心血を注いで住宅を提供する目標だった。その大事な根幹をないがしろにするとは……などと弱々しい腕を振り上げても、老害といわれるだけだろう。
なので、批判はやめ、私自身はマンションの新しい工夫とか、抑えた価格のマンションのことなど、実需層向けの話を積極的に記事化している。
そのような活動を続けていると、微妙な変化を感じるようになった。その変化とは、実需回帰というようなもの。やっぱり、実需層に喜んで買ってもらいたいね、という動きが不動産業界に起きてきたと感じるのである。
実需層向きに工夫を凝らした3LDKを安く売ろうとする。新しい収納を考える。天井を高くする……独自のアイデアを凝らす物件がいくつも出てきた。
住宅づくりの方向性が少し変わってきたように感じる。
そして、記事の手応えというか、反応にも変化が生じている。実需向けの記事をつくると、以前よりPVが伸びるようになったのだ。興味を示し、読んでくれる人の数が確実に増えている。
実需層が少しずつ動き出した。ただし、実需層はなかなかに手強い。新しい工夫や抑えた価格だけでは納得しない。最後は、「買って損をしない」「むしろ得する」「いや、今買わないのは大きな損ですよ」で攻め落とすしかない。
だったら、投資目線の購入者を集めたほうが手っ取り早い? いやいや、そうじゃないんだよねえ。























