不動産学の魅力 明海大学不動産学部 第57回 不動産投資の国際化とIT ブロックチェーン技術が浸透
住宅新報 2025年7月1日 号 7面
ブロックチェーン技術は、情報の透明性、信頼性を飛躍的に高める革新的な仕組みとして、情報化社会において近年急速に注目を集めている。ブロックチェーンとは、取引記録などの情報を暗号技術を用いて分散的に管理し、改ざんが困難な形で保持するデジタル台帳である。特に不動産業界では、複雑な契約や権利関係の記録における透明性向上が期待されている。グローバルな資金の流動性が高まる中、海外投資家にとっての投資環境整備という観点でも、その浸透可能性には注目すべき点が多い。近年、日本の不動産に投資をする海外投資家が増えてきた。日本の不動産取引は多くの関係者が関与し、手続きや契約が煩雑になることがある。また、登記情報等が紙ベースで管理されていることもあり、海外からの投資家にとっては情報の入手が困難で、透明性に不安を抱く要因となっている。加えて、言語や制度の違い、信頼できる仲介業者の選定など、多くの不確実性が投資の障壁となっている。
こうした中、ブロックチェーン技術の活用は、海外投資家にとって大きな利点をもたらす。第1に、物件情報や登記記録、過去の売買履歴などを改ざん不可能な形で記録・共有することで、高い透明性とトレーサビリティが確保され、信頼性が向上する。第2に、スマートコントラクトを用いれば、クロスボーダーでの契約や決済が迅速かつ正確に行えるようになり、手続きの効率化が期待される。第三に、言語の壁を越えた共通のデータフォーマットで情報を提供できれば、グローバル投資家にとっての市場参入が容易になる。一方で、課題も多い。日本を含む多くの国では、登記制度や契約の法的効力が中央政府によって管理されており、ブロックチェーン上のデータの法的正当性がまだ確立されていない。更に不動産は物理的資産であるため、ブロックチェーンの外側で取引などを行った「オフチェーン情報」との整合性を保つ必要もある。なお、諸外国では既に実用化に向けた動きが見られる。例えば、スウェーデンでは土地登記システムにブロックチェーンを取り入れ、クロスボーダー取引の効率化を目指している。この技術は特に海外投資家にとって魅力的な投資環境を形成する鍵となりうる。法制度と業界構造の改革が進めば、不動産市場の国際化と透明化が一層促進される。
【教員のコメント】
ブロックチェーン技術は不動産業界を発展させる高い潜在力があり、その研究価値は高い。この技術の具現化には、法制面の整備、情報のセキュリティー確保、業界の受け入れに向けての理解や運用ルールの標準化などが求められている。(山本卓)

























