不動産学の魅力 ひばりヶ丘駅北口再開発の影響 不動産価格は本当に上がったのか? 明海大学 不動産学部 第55回
住宅新報 2025年6月17日 号 7面
不動産学を学ぶ前、私は「駅前の再開発が行われれば、駅周辺ならどこでも必ず地価が上がる」と思い込んでいた。だが、ゼミで実施した「ひばりヶ丘駅北口の再開発が不動産市場に与えた影響」の研究結果を通じて、その単純な考えが大きく変わった。
ひばりヶ丘駅北口では、2007年から2019年にかけて再開発が行われ、バスロータリーの新設や交通動線の改善が実施された。私たちはこの開発が住宅価格に与えた影響を検証するため、国土交通省「土地総合情報システム」から取得した取引データを用い、まずは北口と南口の戸建て住宅における平均値レベルでの価格上昇率の比較を行った。さらに新築と中古に分け、計量経済学的手法によって住宅面積、最寄駅距離、及び築年数といった住宅属性を出来るだけコントロールし、再開発の効果を実証的に分析した。
分析の結果、駅北口全体で見ると、新築住宅の価格は上昇していたが、中古住宅はむしろ下落していることが明らかとなった。また、新築価格の上昇は開発による影響かと思われたが、この結果についても課題が残されていることが分かった。それは、再開発完了後に建設された物件には、「内生性」の問題が生じている可能性があるためである。つまり、開発によって住宅需要が増加したというよりも、偶然価格の高い物件が売買されたことが影響しているかもしれないというわけだ。
そこで、「駅北口から徒歩5分以内」というエリアに限定して同様の分析をしたところ、結果は一変した。このエリアでは他のエリアと比べ、新築戸建て住宅の価格が約43%、中古戸建住宅の価格でも約20%上昇しており、いずれも統計的に有意だった。再開発によって生じた交通利便性の向上や景観整備、安全性の向上が、住宅需要を部分的に押し上げたことが影響している可能性が示されたのである。
この経験を通じて、私は「再開発による影響は、駅の近くなど特定のエリアでは強く表れるが、少し離れた場所では影響はあまり見られないことがある」という不動産市場の現実を学んだ。
私が思う不動産学の魅力とは、単に建物や制度を扱うだけでなく、経済学を軸に、人々の行動や市場の動きを論理的に読み解ける点にある。表には見えにくい需要の変化や価値観の移り変わりを数値から捉えることに、この学問の奥深さと実践的な意義を感じている。
【教員のコメント】
再開発が住宅価格に及ぼす影響を実証的に分析した3年ゼミでの研究成果である。学部生が行える分析技術は限られているため分析結果に課題はあるが、推計方法に工夫をして、中古住宅価格に及ぼす影響が距離によって異なることを発見している。(原野啓)

























