長谷工コーポ 熊野聡社長が記者会見 厳しい市況への耐性強める 建設と不動産、管理運営の3軸体制で
住宅新報 2025年6月17日 号 5面

――市況をどう見る。人口減少下での成長戦略は。
主事業である工事事業は建設需要が旺盛で、足元の受注材料は豊富に確保できている。ただ建築費は高騰しており、いかに売り値に転嫁できるかがポイントだ。分譲マンション価格の上振れには危惧を抱いている。資材の急激な高騰は生コンなどを除けば、やや一服した感がある。一方で、人件費、人手不足の労務に関しては落ち着く気配がない。
人口減少と世帯数の関係で言えば、全体ボリュームの住宅はすでに充足している。ただエリア別に見ると、首都圏には人口が流入している地域もある。更に質の面でなお需要が見込める。全体ボリュームが減ってもシェアを上げて、売り上げの維持もしくはプラスアルファーを図っていきたい。他社の追随を許さない集合住宅建築の強みをいかんなく発揮して、ディベロッパーの期待に応えられるものをコスト、品質、商品企画で供給していく。
長谷工は一本足打法と揶揄(やゆ)されつつも、分譲マンション工事に特化してきたからこそ競争力がついた。しかしこれからは、他の分野でも強みを持たなければならない。同じ分譲マンションにしても得意の板状型以外に、ここ4~5年はタワーマンションにも注力し一定の実力がついた。もちろん賃貸マンションでも戦える。
更に、住宅に親和性のあるホテルやシニア住宅、老人ホームにも施工領域を広げていきたい。住宅とは関係のない物流倉庫やデータセンターについても考えている。
――他分野とは。今後の海外戦略は。
衣食住のうちでは食に興味がある。自国ファーストのような世界情勢下では、ある程度自給自足に近づける意味合いで、すでに米作りやサーモンの養殖に出資したりしている。マンションの住人の方が小さな農園をやってみるなどして、我々の事業分野と食というものが組み合わさって、そこから新しいサービスが生まれるかもしれない。
民間の学童保育にも出資している。高齢者と子供の組み合わせも親和性が高い。例えば高齢者が自分の住むマンションの共用部で、子供に何かを教える。多世代型、交流型の住まいの提供は私たちにもできる。
豪州進出も検討 海外展開は長谷工の強みがどこにどう発揮できるかを模索しながら、ターゲットの国を決めていく。今はディベロッパーとして北米の賃貸住宅に投資しているが、他の国では、既に投資しているイギリスに加え、オーストラリアでも長谷工の培った住宅ノウハウを生かせないか検討中だ。数年前からベトナムでもディベロッパーとゼネコンの両面でサービスアパートメントを供給しているが、誤解を恐れずに言えば、日本の品質モードが価格に反映されて利益になるには至っていない。長谷工が一からものをつくる競争力は、まだまだの感がある。我々には住宅周辺のソフトサービス事業もあり、将来的には海外で提供できるよう時間をかけて模索していきたい。
――今年度から始まる新中期経営計画への取り組みは。
建設と不動産、管理運営の3軸体制で臨む。資本と人をどう生かし、利益を上げていくかが私の課題だ。一人当たりの生産性、効率性を今までとは違うモードにしたい。それにはDXの活用はもちろんだが、仕事をする上でつなぎのロス、時間の無駄を減らすことが大事だ。既に建設現場では協力会社と呼吸が合えば、ロスが少なく生産性が上がっている。他の事業でもロスを減らせる余地はある。また人を機械に置き換えられるものは実施していきたい。
不動産分野ではお金の効率性を追求している。1年ほど前から私が営業のトップとして、資金の回転を大事にすることを社内に浸透させ、ようやく定着してきた。当社はゼネコンであるが不動産に立脚した業態のため、不動産分野が厳しくなると建設にも影響してくる。その時に管理運営事業が支えてくれることを期待して、今回この3軸体制を発表した。
M&Aに関しては、同業他社よりも新たな分野を中心に考えていきたい。当社はゼネコンだが建築事業だけなので、たとえば土木事業をやっている会社とのM&Aはあり得るかもしれない。今は3大都市圏だけの展開だが、エリアを広げるため、あるいは海外事業拡大のためにM&Aの可能性はある。大きな会社と一緒になってシェアを上げるという考えはない。
長谷工DNAを継承 社員に日頃からよく話すのは「長谷工DNA」。具体的には行動力、目標達成力、工夫力、団結力だ。長谷工はゼネコンと不動産、両カテゴリーのちょうど間に位置している。これには手本がない。自分たちで独自に進化してきた歴史がある。長谷工にいる限りは会社を好きになったほうが、仕事がしやすいんじゃないかとも言っている。





















