不動産学の魅力 明海大学 不動産学部 第37回 ヴァーティカルガーデンシティ 長年にわたって愛される都市づくり
住宅新報 2025年2月4日 号 7面
再開発コーディネーター協会主催の麻布台ヒルズ視察会に参加した。日本一高いビルのふもとには広大な緑地があり、都心にいながら自然豊かな空間を楽しむことができ、非常に居心地の良い空気があった。視察を通じて、森ビルの再開発事業に興味を引かれた。そこで、森ビルが初めて大規模再開発を行ったアークヒルズを訪れた。ヴァーティカルガーデンシティという理念のもと、都心らしい高度利用を実現しながら、快適な心地良い環境を目指し開発された。まもなく40年を迎えるが、今でも高級エリアとしての地位を保ち続け、人や企業が集まり、愛され続けている。その理由の一つとして、自然環境の整備が挙げられる。エリア全体に多くの緑が植えられ、外周道路には桜並木が配置されている。春になると、これらの桜が満開になり、見事な景観を楽しむことができる。遅い秋に訪れたが、すべての葉が落ちた木々やまだ残っている紅葉を観賞することができた。このように、1年を通じて自然のさまざまな表情を見ることができる。これが多くの人々を引きつけている理由だと感じた。森ビルの緑被率調査によると、1990年は1.15ヘクタールだった緑が、2006年には1.86ヘクタールに達しており植物が順調に育っている。
一方で、訪れた際に、再開発エリアに似合わない白い煙突があることも気になった。インターネットで調べて見ると、アークヒルズ全体の空調や電源供給を行う集中設備の排熱塔であった。そして偶然にも、開発前にはこの近くに銭湯があり、煙突の面影が残された格好になっている。この銭湯は大正時代から営業し、有名小説家の日記にも出てくる由緒ある銭湯であった。森ビルが意図的にこの面影を残したことは確認できない。だが結果として、かつての住民や権利者、新しく訪れる人々に対して、開発前の町の人々の生活を感じさせる役割を果たしているように思われた。
アークヒルズの再開発事業を通して、再開発事業に自然環境が欠かせないという森ビルの理念がよく分かった。そして煙突の面影のように、地域の歴史を尊重する視点も重要だと感じた。自然を育て歴史を尊重することにより次の文化が創造され、長年にわたって愛される場所が創られていくのではないか。今回の視察会で訪れた麻布台ヒルズが、この先どのように成長を遂げるのか楽しみだ。
【教員コメント】
インバウンドへの期待が高まる令和時代には、新自由主義的な都市づくりが増えていく。オープンスペースにも集客や高級感を意識した商業的デザインが施され、消費促進イベントが開かれる。自然や歴史がさりげなく人に寄り添う、真のパブリック空間が持続可能な都市づくりには欠かせない。(小杉 学)

























