不動産学の魅力 明海大学 不動産学部 第36回 繋がりを意識した再開発 より良い「東京」を実現
住宅新報 2025年1月28日 号 7面
先日、再開発コーディネーター協会主催による、学生対象の『麻布台ヒルズ』の視察会に参加した。再開発エリアは、「我善坊谷」と呼ばれる谷地で坂道が多い土地だった。そこには、細分化された土地に住居や商店、ビルなどが密集していて、防災面に問題を抱えていた。
そこで森ビルは約300人の地権者と30年以上の年月をかけて交渉し、再開発を行った。細分化した土地の権利をまとめ、建物を集約することで広いオープンスペースを確保し、緑環境の充実化を図った。職・住・遊・学・商などの多彩な都市機能を複合したコンパクトシティとして、「立体緑園都市」という理念をもとにまちづくりがされている。実際に『麻布台ヒルズ』の道路やオープンスペースを散策してみると、まるで自然がまちを丸ごと包み込んでいるような感覚を享受することができる。まさに、都心のオアシスと言える印象を受けた。また、周辺エリアと繋がる交通網の整備、災害時の備えがなされており、元々この地に住んでいた人の多くも適切な補償を受け、ほとんどの人が権利変換で得たマンションに戻っている。このように、緑豊かで災害に強く、地元の人とも良い関係を築き、素晴らしいまちができたと考えることができるが、同時に失った大事なものあるのではないか。例えば、江戸時代の我善坊谷は下級役人が住む街であり、周辺台地が武家屋敷街であったことと対照的であった。3つの坂道は地形的な特徴を生かした街並みの重要な要素でもあり、地域の憩いの場ともなっていた。また、再開発前の様子を記録した写真からは、商店街もあり地域コミュニティの中心として機能していたことがわかる。立ち退きにより、地域住民の日常生活を支えてきた商店街の人たちと、長年培ってきた顧客との関係は途絶えてしまった。
今後の東京の再開発では、そのまちの文化や歩み、その地の人と人の繋がり、コミュニティ、隣り合うまちとの調和や連続性も積極的に取り入れることができないだろうか。合理的なまちづくりとその地の過去と未来と人を繋ぐこと。これらを行うことで、世界一の大都市でありながら、エコで清潔な都市であった「江戸」としての伝統ある街並みを受け継ぎ、技術による革新と優れた理論を併せ持つ国際都市としての、より良い「東京」が実現するのではないだろうか。
























