知って得する建物の豆知識 392 建築の「納まり」 空間の質を決める
住宅新報 2025年1月14日 号 9面
連載: 知って得する建物の豆知識
建築における「納まり」とは、複数の部材が接合する部分の状態や部材を取り付ける方法、それらの総合的な仕上がり具合を指す言葉で、その建築物の美しさや機能性、耐久性に大きく影響します。例えば美観について言えば、部材同士が機能や性能を毀損する事なく接合・実装された、調和のとれた納まりは美しいディテールを作り出し、それが空間の質を決定します。ドイツのモダニズム建築家ミース・ファン・デル・ローエが「建築の神は細部に宿る」と言ったのはまさしくそのことを指しているわけです。
また、建築家が他の建築家の設計図面を見る(読む)楽しみは、詳細図面を見ることにあると言いますが、これもそこに様々な工夫や、その建築家らしい考え方(納め方)から垣間見える、空間の質が楽しめるからに他なりません。
納まりには大きく分けて「見せる納まり」と「隠す納まり」があります。例えば部材同士の接合部に隙間を作って変形や膨張を逃がす目地を設けるのを「目地納まり」と言います。目地納まりには凸納まりと凹納まりがあります。凹納まりは隙間が開くだけですが、凸納まりでは「雇い材」という第三の部材を導入して納めます。そして、特に見せない目地の納まりは「眠り目地」と呼ばれ、外壁工事における石やタイルなどのすき間を極力小さくして、目地を目立たなくするか、あるいはほぼ無くした状態の施工方法です。このため、他の目地施工とは異なり、石やタイルの寸法精度や低い熱膨張率が求められます。また最近では内壁と床の接合部に本来であれば巾木を設けるところ、数ミリ程度の眠り目地で納める方法も流行っています。
具体的に納まりを構成する要素としては、安全性・精度・密着性・強度・耐久性・メンテナンス性が挙げられます。部位としては梁と柱の接合、基礎と壁の接合など建物の構造を支える部分、壁と天井の接合、窓枠と壁の接合など建物の外観や内装に関わる部分、照明器具、コンセント、換気扇など設備機器の取り付け部分が主な部位です。
木工事の収まりで、最も気を使うのは年輪の方向と「痩せ」についてです。板材は繊維が走る方向と並行に力が加わると非常に割れやすく、ひび割れや破損の原因になります。また、樹種によって乾燥による収縮度、すなわち「痩せ」が異なり、これを無視して組み合わせると、大事なところに思わぬ隙間が発生することになります。特に構造部材では痩せによってボルトがスカスカに緩んだり、接合部が所定の強度を発揮できない場合もあり、痩せを考慮した納まりが求められます。
既製品の建築部品、例えば照明器具を考えた場合、既製品の灯具をポン付けするにしても、その納まりは下地の強度、強い地震にあった時に落下しないようにするにはどうするか、そしてランプの交換、堆積する綿ぼこりの清掃性などを考慮する必要があります。また、建築躯体と照明装置が一体化する建築化照明の場合は、灯具の交換性、間接光の反射性、ボックス内部の清掃などについて納まりを検討します。
納まりが適切に行われていない場合、最も問題になるのが雨水が建物内に侵入し、腐朽やカビの原因となる雨漏れです。雨は毛細管現象で細い隙間を上がってきて、思わぬところに被害を発生させます。これを防ぐには防水層の充分な重ね代(しろ)、雨返しを持つ材の組み合わせ、湿気が滞留しない断面設計などが必要です。これはほんの一例ですが、納まりは建築物にとって非常に重要な要素であり、設計から施工、メンテナンスに至るまで、知恵と工夫の注入が必要なのです。
(建築家・中村義平二)


























