蝕む「カスハラ」 (下) 問われる経営真価 ~人材対策の試金石に~ 「音量、時間、頻度」で枠組み整備を
住宅新報 2024年12月10日 号 6面

賃貸オーナーから「5時間半、正座で前任者の失態を叱られた」、入居者から「漏水補償を今すぐ認めろと8時間軟禁された」。プリンシプル住まい総研の上野典行氏によれば、賃貸現場のカスハラ例は尽きない。担当者が珍しい名字の場合、家族や子供の名前がさらされる危険もある。 対策の放置は、担当者をうつ病や休職、退職に追い込むだけでなく、自傷や他害、会社への訴訟に発展する可能性がある。応急対応する他の従業員への影響も甚大だ。採用を試みても、担当者がカスハラのババを引く運命の組織に加わりたい人材がどれだけいるか。解決の処方箋は、経営者が足元の現場体制にきちんと目を向けることに尽きる。
上野氏は、取り組みの方向性として「個別事例の蓄積と共有化」を挙げる。例えば、3年前にカスハラが原因で退職した同僚がいれば、まず自社内で当時を振り返ることだ。顧客の言い分は正当だったか、同僚の置かれた状況や会社としての対応は適切だったか。その上で、社外の同業者と話す機会を設け、業界としての知見を蓄積していく。
正当な申し出と毅然と対応すべき内容を分けることも必要だ。上野氏は「正当な指摘・過剰な要望・ハラスメント」の3段階に分けた介護現場の「スタッフプロテクション」制度に着目する。スタッフに対する身体的暴力や暴言など過度な言動を常態化せず、対応策の具体化を目指す。不動産業界もこれを参考に、どこまでが許容できる範囲なのか各社で議論すべきとする。
ポイントは「頻度、時間拘束、暴言(音量とワード)、暴力・威嚇」。特に初期は「音量、時間、頻度」に着目し、「上司を呼ぶ、警告・抑制、警察を呼ぶ」の線引きを検討すべきという。経営判断としてオーナーに管理契約の解除を申し出なければならないかもしれない。そのハードルの高さは推察されるが、社員を守れるのは経営者だけだ。
賃貸や分譲マンションの管理では、カスハラは建物現場で起こりやすく、経営者に見えにくい面がある。多店舗展開する事業所では営業現場のトップが暴君化している恐れもある。顧客に加え、自社内でもハラスメントが起こりうる状況に注視し、ミドル層への研修も必要だろう。
事例出にくい売買領域
取引価格の高い売買仲介もカスタマー上位になりやすい。顧客にとっては一生に数度の高額取引となるため、その真剣さと期待値から売主、買主共により高次元で攻め立ててくる傾向があるという。不動産会社に落ち度や説明不足があれば、感情の炎に油を注ぐ形となる。上野氏は「賃貸に比べて案件が少ない。物件の瑕疵など重い話になることから事業者が話したがらない」と指摘。利害が生まれにくい遠方の事業者と、事例共有する形が一つの対策と見る。他方、発生場所は事業所となりやすいとし、賃貸に比べて経営者による状況把握がしやすい点を指摘する。























